債権分野、学習は進んでいますか?「弁済」とか「代物弁済」とか「代位弁済」とか、なんだか似たような言葉が出てきて、「結局どういう意味だっけ?」「違いは何?」って混乱してしまうこと、ありませんか?特に「代位」とか「求償」とか、字面だけ見てもピンとこない方も多いかもしれませんね。

今回は契約の終わり方に関する重要なテーマ、「弁済」とその関連知識について、わかりやすく解説していきますね!
「弁済」というのは、簡単に言えば、契約で約束した義務をきちんと果たすことです。お金を返すとか、物を引き渡すとか、そういうことですね。これがきちんと行われることで、契約関係は無事に終了します。でも、世の中そんなに単純じゃなくて、本人以外が代わりに支払ったり(第三者弁済)、お金の代わりに物で支払ったり(代物弁済)、保証人が肩代わりして、その後どうなるの?(代位弁済・求償権)…といろいろなケースがあるんです。
この記事では、弁済の基本的なルールから、誰が弁済できるのか、誰に弁済すれば有効なのか、さらには代物弁済や代位弁済(求償権)といった宅建試験でもよく問われるポイントまで、具体例や図を交えながら丁寧に解説していきます。
<この記事でわかること>
- 弁済の基本的な意味と、有効な弁済のためのルールについて理解できる
- 第三者でも弁済できるケース(第三者弁済・代位弁済)とその要件がわかる
- 代物弁済とは何か、その際の注意点や効果のポイントが整理できる
- 保証人などが代わりに弁済した場合の権利関係(弁済による代位、求償権)との違いがわかる
- 宅建試験で押さえておくべき弁済関連の重要ポイントが明確になる
弁済の基本ルール!第三者弁済や有効な弁済の相手、提供方法まで解説
まずは基本となる「弁済」そのものについて、どんなルールがあるのか、しっかり理解を深めていきましょう。ここが全ての土台になりますからね!

基本をしっかり押さえれば、応用問題も怖くありません!
弁済とは? – 約束を果たして債務を消滅させること
弁済(べんさい)とは、債務者(お金を返す、物を渡すなどの義務を負う人)が、債権者(お金を受け取る、物を受け取るなどの権利を持つ人)に対して、契約などで約束した内容の給付(お金の支払いや物の引渡しなど)を完全に実現し、それによって債務(義務)を消滅させる行為のことです。
もっと簡単に言うと、「約束したことを、約束通りにきちんと実行すること」ですね。これが債権(契約から生じる権利義務)の最も基本的な消滅原因となります。
弁済にあたる例:
- 借主(債務者)が貸主(債権者)に借りたお金を全額返すこと
- 不動産の売主(債務者)が買主(債権者)に物件を引き渡し、登記を移転すること
- 請負人(債務者)が注文者(債権者)に頼まれた建物を完成させて引き渡すこと
これらの弁済が正しく行われれば、債務は消滅し、当事者間の契約関係は目的を達成して円満に終了する、というわけです。
自分以外の人でも弁済できる?第三者弁済(代位弁済)のルール
通常、弁済は債務者本人が行うものですが、債務者以外の第三者が代わりに弁済することもできるのでしょうか? 例えば、友達の借金を代わりに払ってあげる、親が子供の家賃を払う、といったケースですね。
これを一般に「第三者弁済」と言います。(特に保証人など、後で説明する「弁済による代位」をする立場の人が弁済する場合は「代位弁済」と呼ばれることもありますが、基本的には第三者弁済の一種です)
原則は誰でもOK!でも例外もある?
民法では、原則として、第三者も有効に弁済することができる、とされています(民法第474条1項)。債権者にとっては、誰から支払ってもらっても、最終的にお金が回収できれば問題ないことが多いからです。
ただし、例外的に第三者弁済ができないケースもあります。
- その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき:
例えば、有名な画家が絵を描く、特定の歌手が歌を歌うといった、その人でなければ意味がないような債務(一身専属的な債務)は、第三者が代わりに履行することはできません。当たり前ですよね。 - 当事者が反対の意思を表示したとき(禁止特約など):
債権者と債務者の間で、「この借金は、本人以外からの支払いは受け付けません!」というような特約(第三者弁済禁止特約)がある場合は、原則として第三者は弁済できません(民法第474条2項)。ただし、この特約があることを第三者が知らなかった(善意)かつ知らないことに過失がなかった(無過失)場合は、例外的に第三者弁済が有効になることもあります。
債務者の意思に反して弁済できるのは「正当な利益を有する者」だけ!
さらに、もう一つ非常に重要なルールがあります。
第三者弁済について、上記の①②のような禁止がない場合でも、その弁済が「債務者の意思に反する」とき(つまり、債務者が「他の人に払ってほしくない!」と思っている場合)は、誰でも自由に弁済できるわけではありません。
この場合、弁済することについて「正当な利益を有する」第三者でなければ、債務者の意思に反して弁済することはできません(民法第474条3項、4項)。
逆に言えば、「正当な利益を有する者」であれば、たとえ債務者が「君に肩代わりされるのは迷惑だ!」と思っていても、有効に弁済できてしまう、ということです。

債務者が嫌がっていても、正当な利益があればお構いなしに弁済できちゃうんですね!
正当な利益を有する者って具体的に誰?(保証人、物上保証人など)
では、その「弁済することについて正当な利益を有する者」とは、具体的にどんな人のことを指すのでしょうか?
典型的な例としては、以下のような人たちが挙げられます。彼らは、債務者が弁済しないと自分が直接的な不利益(支払い義務を負う、担保を失うなど)を被る立場にあるため、弁済する正当な利益が認められます。
【正当な利益を有する者の例】
- 保証人・連帯保証人: 主債務者が払わない場合に自分が代わりに支払う義務を負うので、弁済して主債務を消すことに直接的な利益があります。
- 物上保証人: 他人の債務のために自分の不動産などを担保(抵当権など)に入れている人。主債務が弁済されないと自分の財産が競売されてしまうので、それを防ぐために弁済する利益があります。
- 抵当不動産の第三取得者: 抵当権が付いたままの不動産を買った人。買主自身が債務者ではないですが、元の債務が弁済されないと買った不動産が競売されてしまうので、それを防ぐために弁済する利益があります。
- 後順位抵当権者: 同じ不動産に複数の抵当権が設定されている場合、先順位の抵当権が実行されると自分の抵当権の配当がなくなる(または減る)可能性があります。それを防ぐために、先順位の債務を弁済する利益があります。
<試験での注意点!>
注意点として、単なる親族(親や兄弟、配偶者など)というだけでは、「正当な利益を有する者」には当たりません。 もちろん、親が子供の借金の保証人になっていれば別ですが、保証人でもないのに、ただ「親子だから」という理由だけでは、子供の意思に反して勝手に借金を弁済することはできない、ということです(もちろん、子供が同意していれば問題ありません)。試験でひっかけ問題として出やすいので気を付けてくださいね!愛情や人間関係だけでは「正当な利益」とは認められないのです。
<ヒント:知識のリンク>
この「正当な利益を有する者」、どこかで見覚えありませんか? そうです!「時効の援用ができる者(時効によって直接利益を受ける者)」と、メンバーがかなり似ていますよね!
保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者、後順位抵当権者… これらは時効援用権者としてもよく登場します。
このように、別々の論点に見えても共通する登場人物や考え方がある場合、関連付けて覚えると、知識が整理されて忘れにくくなりますよ!効率的な学習のコツですね。
誰に弁済すればいいの?弁済の相手方
お金を返すとき、誰に渡せば「ちゃんと返した」ことになるのでしょうか?これも重要なルールがあります。
原則は債権者などの「受領権限がある人」
弁済は、当然ですが、債権者本人や、その代理人(法定代理人や任意代理人)、またはその他法律上正当な「受領権限(じゅりょうけんげん)」を持つ人に対して行わなければ、原則として有効な弁済とは認められません(民法第478条参照)。お金を貸してくれた人や、その人から正式に委任を受けた人に返すのが当たり前ですよね。
見た目は債権者っぽいけど…?受領権者としての外観を有する者への弁済
しかし、世の中には「本当にこの人が受け取る権利があるの?」と疑わしいけれど、見た感じは正当な権利者っぽく見える、という人もいます。例えば、亡くなった債権者の相続人を名乗る人、債権を譲り受けたと主張する人、集金係のフリをする人など…。
民法では、このような「受領権者としての外観を有する者」(以前の民法では「債権の準占有者」と呼ばれていました)に対して、弁済した人が善意(その人に受領権限がないことを知らず)かつ無過失(知らないことについて落ち度がない)であれば、その弁済は有効になる、というルールがあります(民法第478条)。
例:
- 銀行の窓口で、預金通帳と届け出印を持参し、本人確認書類も提示した人に対して、銀行員が必要な確認をしっかり行った上で払い戻した場合(たとえその人が盗んだ通帳と印鑑、偽造書類を使っていたとしても、銀行側に過失がなければ有効な弁済と認められる可能性があります)。
- 家賃の集金に来た人が、いつもと同じような領収書を持ってきたので支払ったが、実はその人は解雇されていて集金権限がなかった場合(ただし、弁済者に無過失が認められるかは、状況により慎重に判断されます)。
これは、うっかり権限のない人に支払ってしまった弁済者を一定の条件のもとで保護し、取引の安全を図るためのルールです。ただし、「無過失」まで要求されるので、ちょっと怪しいなと思ったら確認を怠るなど、不注意があると保護されない可能性が高いです。安易に認められるわけではありません。
どこで弁済する?弁済の場所
弁済をどこですべきか、という場所も民法で定められています。
取り決めがあればその場所で
まず、契約などで当事者間の合意(特約)があれば、その定められた場所で弁済するのが原則です。例えば、「代金は売主の銀行口座に振り込む」とか「商品は買主の店舗に納品する」といった合意ですね。
取り決めがなければ?原則と例外
もし、弁済場所について特に取り決めがない場合は、どうなるのでしょうか?
- 原則:債権者の現在の住所(持参債務)
特定物の引渡し以外の場合(金銭債務など)は、原則として債権者の現在の住所が弁済場所となります(民法第484条1項)。つまり、お金を返すような場合は、借りた側(債務者)が、貸した側(債権者)の所まで持っていって返すのが原則なんですね。これを「持参債務(じさんさいむ)」の原則と言います。 - 例外:特定物の引渡しは物が存在した場所
特定物の引渡し(例えば、特定の中古車、一点物の絵画、特定の土地・建物など、その物自体が契約の目的となっている物の引渡し)の場合は、契約などで別段の定めがなければ、債権発生時にその物が存在した場所が弁済場所となります(民法第484条2項)。例えば、AさんがBさんから特定の絵画を買う契約をした場合、契約時にその絵画がBさんのアトリエにあったなら、原則としてBさんのアトリエで引き渡す(Aさんが取りに行く)ということです。
<不動産取引の実務>
不動産の引渡しについて、民法の原則では「債権発生時にその物が存在した場所」となります。しかし、実際の不動産取引では、契約書で「残代金の支払いと同時に、売主は買主に対し、●●(例えば仲介会社の事務所など)において本物件の所有権移転登記に必要な書類を交付し、鍵を引き渡す」などと、別途弁済場所を合意で定めることがほとんどです。実務上の慣行と法律の原則の違いも知っておくと、理解が深まりますね。
弁済の提供ってなに?現実の提供と口頭の提供
債務者が「さあ、約束通り弁済しますよ!」と準備を整えて、債権者にその受け取りを求める(協力をお願いする)ことを「弁済の提供」と言います。実際に弁済行為が完了していなくても、この「提供」をしただけで、債務者にとって有利な法的効果が認められるんです。
例:不動産売買の決済日。買主Aさんが、約束通り売買代金全額を現金で用意して、売主Bさんの住所(または契約で定めた決済場所)まで持参し、「代金を用意してきましたので、受け取ってください」と申し出ること。これが弁済の提供です。たとえ売主Bさんがその場で受け取りを拒んだとしても、買主Aさんは「提供」したことになります。
弁済の提供の方法には、主に2つの種類があります。
提供の方法①:現実の提供
現実の提供とは、債務の内容に従って、実際に給付(お金や物など)を差し出すことです(民法第493条本文)。
金銭債務のように、債務者が債権者の住所に持参しなければならない「持参債務」の場合は、債務者がお金を準備して債権者の所まで持って行って「はい、どうぞ」と差し出す必要があります。これが現実の提供です。
<注意!>
弁済は、原則として、債務の全額について、本来の内容どおりに行う必要があります。例えば、100万円の借金に対して「とりあえず50万円だけ持ってきたよ」と一部だけを提供しても、原則として有効な弁済の提供にはなりません(債権者がそれで良いと同意すれば別ですが)。
提供の方法②:口頭の提供
口頭の提供とは、債務者が弁済の準備(お金を用意するなど)をしたことを債権者に通知して、その受領を催告(受け取ってくださいとお願い)することです(民法第493条ただし書)。実際に持って行かなくても、「準備は万端です!受け取りに来てください(または、受け取る準備をしてください)!」と口頭(や書面、電話、メールなど)で伝えるだけでも「提供」になる場合があります。
ただし、口頭の提供で足りるのは、以下のような場合に限られます。
- 債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合: 「もうお金なんて受け取らないからな!」と債権者が明確に拒否しているのに、わざわざ現実にお金を持って行く必要はないですよね。この場合は、「準備はできましたよ」と通知すればOKです。
- 債務の履行について債権者の行為を要する場合: 例えば、買主が売主の倉庫まで商品を取りに行く契約(取立債務)の場合、売主は商品を準備して「商品準備できたから、いつでも取りに来ていいですよ」と買主に通知すれば、口頭の提供になります。買主が取りに来るという行為が必要だからです。
どちらの提供が必要かは、債務の種類(持参債務か取立債務かなど)や、債権者の態度によって判断する必要があります。
弁済の提供をするとどうなる?その効果
では、弁済の提供をすると、債務者にとってどんな良いことがあるのでしょうか?
最も重要な効果は、債務者は、弁済の提供をした時から、債務不履行(約束違反)によって生じる一切の責任を免れるということです(民法第492条)。
具体的には、
- 履行遅滞にならない: 提供した後は、たとえ債権者が受け取らなくても、支払いが遅れたことにはなりません。
- 遅延損害金が発生しない: 履行遅滞にならないので、遅延利息などを支払う必要もなくなります。
- 契約解除の原因にならない: 相手方は、債務不履行を理由に契約を解除できなくなります。
- 危険負担が変わる可能性: 特定物の引渡しの場合、提供後に目的物が不可抗力で滅失しても、原則として債権者の負担となる場合があります(危険負担の移転、民法536条2項)。
つまり、たとえ実際に弁済が完了していなくても(例えば、債権者が意地悪で受け取らなかった場合など)、「ちゃんとやるべきことはやろうとしましたよ!」という状態(=弁済の提供)にしておけば、自分が不利な立場に追い込まれることを防げる、というわけです。これは債務者にとって非常に大きなメリットですね。

ちゃんと提供さえすれば、相手が受け取らなくても自分のせいにはならないんですね! これはしっかり覚えておかないと!
代物弁済とは?お金の代わりに物で支払う際の重要ポイント
次に、「代物弁済(だいぶつべんさい)」について見ていきましょう。これは文字通り、「物の代わり」に別の物を渡して弁済する方法です。お金がない時に土地で支払う、みたいなケースですね。
代物弁済の基本的な仕組み – 合意があればOK!
代物弁済とは、債務者が、債権者の承諾を得て、本来支払うべきもの(例:金銭)に代えて、別のもの(例:土地、建物、車、株式など)を給付することによって、元の債務を消滅させる契約のことです(民法第482条)。
例:
Aさん(債務者)がBさん(債権者)から1,000万円借りていました。しかし、Aさんは現金で返済する目処が立ちません。そこで、AさんはBさんと話し合い、Bさんの承諾を得て、借金1,000万円の代わりにAさん所有の時価1,000万円相当(または相当でなくても合意があればOK)の土地をBさんに引き渡す(所有権を移転する)ことにしました。これが代物弁済契約です。
民法第482条(代物弁済)
弁済をすることができる者(弁済者)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
ポイントは以下の2点です。
- 必ず債権者の承諾が必要: 債務者が勝手に「お金の代わりにこれで!」と別の物を押し付けることはできません。必ず債権者のOKが必要です。これは「契約」であることからも明らかですね。
- 実際に代わりの給付が完了して初めて債務消滅: 代物弁済の合意(契約)をしただけでは、まだ元の債務は消えません。実際に代わりの物(例:土地の所有権)が債権者に移転して初めて、元の債務(例:借金)が消滅します。「他の給付をしたとき」に効力が生じる、という点が重要です。
【要チェック】代物弁済で押さえるべきポイントまとめ
代物弁済については、宅建試験対策として以下の点をしっかり押さえておきましょう。
- 不動産で代物弁済する場合、所有権移転登記が必要:
不動産を代物弁済の目的とする場合、口約束や契約書へのサインだけでは不十分で、所有権移転登記手続きが完了して初めて、「他の給付をした」ことになり、元の債務が消滅したことになります。登記をもって給付の完了とみなされるわけですね。これは非常に重要なポイントです! - 目的物の価値は同等でなくてOK、原則として清算も不要:
代わりの給付として提供する物の価値が、元の債務額とぴったり同じである必要はありません。例えば、1,000万円の借金に対して、時価800万円の土地を代物弁済することも、逆に時価1,200万円の土地を代物弁済することも、当事者がそれで良いと合意すれば有効に成立します。そして、特に別の合意がない限り、差額(200万円)について後で清算する義務は、原則として発生しません。代物弁済の成立によって、元の債権債務関係は完全に終了するのが基本です。(ただし、あまりに不当な場合は問題となる可能性もあります) - 代物弁済として債権を譲渡する場合:
お金の代わりに、自分が持っている別の債権(例:AさんがCさんに対して持っている売掛金債権)をBさんに譲渡することで代物弁済することも可能です。この場合、債権譲渡の対抗要件(Cさんへの確定日付ある証書による通知・承諾など)が具備されれば、たとえ譲渡した売掛金の弁済期がまだ先であっても、代物弁済としての効力(元の借金消滅の効果)は生じます。 - 契約不適合責任も発生する!:
ここも重要です!代物弁済で給付した物(例:土地)に、種類、品質、数量に関して契約内容に適合しない点(例えば、土地に予期せぬ土壌汚染があった、建物に隠れた雨漏りがあったなど)があった場合、これは単なる贈与ではなく「弁済」に代わるものなので、通常の売買契約などと同様に、債務者(給付した人)は契約不適合責任を負う可能性があります(民法559条が準用する562条以下)。つまり、債権者(受け取った人)は、追完請求、代金減額請求(この場合は元の債務額からの減額?)、損害賠償請求、契約解除などができる場合があるということです。

代物弁済って、ただ物を渡せば終わり、じゃなくて結構色々なルールがあるんですね!登記とか契約不適合責任とか、しっかり覚えておかないとだめですね!
代位弁済と求償権 – 肩代わりしたらどうなる?弁済による代位の仕組み
最後に、第三者弁済の中でも特に重要な「代位弁済」と、それに関連して必ずセットで出てくる「求償権(きゅうしょうけん)」および「弁済による代位(べんさいによるだいい)」について解説します。特に保証人が関わるケースで頻出する重要テーマです!
保証人が代わりに返済!代位弁済の具体例
まず、具体的なイメージを掴みましょう。保証人が債務者の代わりに弁済するケースです。
- Aさん(主債務者)がBさん(債権者)から100万円を借りました。
- その際、Aさんの友人であるCさん(保証人)が「もしAが返せなかったら私が代わりに払います」と保証人になりました。
- 残念ながら、Aさんは返済期日までに100万円を返せなくなってしまいました。
- そこで、保証人Cさんが、Aさんの代わりにBさんに100万円を弁済しました。これが典型的な「代位弁済」です(第三者弁済のうち、特に正当な利益を有する者が行う弁済)。
債権者の地位が移る?弁済による代位とは
さて、保証人CさんがAさんの代わりにBさんに100万円を弁済すると、Cさんはただお金を払っただけで終わりなのでしょうか? もしそうなら、保証人になる人は誰もいなくなってしまいますよね。
そこで民法は、保証人Cさんが主債務者Aさんのために弁済した場合、法律上、ある効果が発生することを定めています。それは、元の債権者Bさんが持っていた、主債務者Aさんに対する権利(100万円の貸金債権や、もしBさんがAの不動産に抵当権を持っていたらその抵当権なども含む)が、弁済したCさんにそっくりそのまま移転する、という効果です。これを「弁済による代位(べんさいによるだいい)」と言います(民法第499条、500条)。
<ポイント:弁済による代位>
弁済による代位とは、弁済した人(Cさん)が、元の債権者(Bさん)の地位に「代わって立つ」ということです。Cさんは、あたかもBさんからAさんに対する債権を買い取ったかのような状態になる、とイメージすると分かりやすいかもしれません。これにより、Cさんは元々Bさんが持っていた強力な権利(例えば担保権)を使って、Aさんから回収を図ることができるようになります。
なお、弁済による代位には、保証人のように法律上当然に代位する「法定代位」と、正当な利益を有しない第三者が弁済して債権者の承諾を得て代位する「任意代位」がありますが、宅建試験では主に保証人のケース(法定代位)が重要です。
立て替えた分を請求!求償権について
弁済によって債権者の地位に代位したCさんは、今度は自分が債権者として、元の主債務者Aさんに対して「私があなたの代わりにBさんに支払った100万円を返してください!」と請求することができます。この、立て替えた費用を本来負担すべきだった人に請求する権利を「求償権(きゅうしょうけん)」と言います。
つまり、代位弁済した保証人Cさんは、
- 弁済による代位によって、元の債権者Bが持っていた権利(元々の貸金債権や担保権など)を行使してAから回収する。
- 自己の固有の権利として、求償権を行使してAに支払いを求める。
という、大きく分けて2つの方法(実際には密接に関連しています)で、立て替えたお金を回収しようとすることができるわけですね。
求償権の範囲(どこまで請求できるか)は、弁済した額だけでなく、それに伴う利息や避けられなかった費用なども含まれる場合があります(民法459条、462条など参照)。

保証人が払ったら払い損じゃなくて、ちゃんと元の債務者に請求できる権利(求償権)があって、しかも元の債権者の権利(担保とか)も引き継げる(弁済による代位)んですね。これで安心して保証人も弁済できますね!
まとめ
今回は、民法の「弁済」を中心に、それに関連する第三者弁済、代物弁済、そして保証人が関わる代位弁済(弁済による代位・求償権)について、基本的なルールから試験で問われやすいポイントまで詳しく解説しました。
弁済と一口に言っても、誰が、誰に、何を、どこで、どのように行うかによって、色々なルールがありましたね。特に第三者弁済の「正当な利益」、代物弁済の「登記」や「契約不適合責任」、代位弁済の「代位」と「求償」の関係、しっかり整理できましたでしょうか?
弁済は、契約関係を終了させるための最も基本的な行為ですが、その周辺には第三者の利益(弁済する人、される人)や取引の安全を守るための様々なルールが存在します。特に、
- 第三者弁済ができる「正当な利益を有する者」の範囲(保証人などはOK、単なる親族はNG)
- 受領権限のない者への弁済が有効になるための「善意無過失」要件
- 代物弁済の効力発生要件(不動産なら登記完了)と契約不適合責任の可能性
- 保証人などによる代位弁済に伴う弁済による代位(債権者の地位移転)と求償権(立て替え分の請求権)の関係
これらは、宅建試験でも頻出の重要論点です。それぞれの言葉の意味だけでなく、なぜそのようなルールになっているのか(趣旨)、どんな場合に適用され、どんな効果があるのかをセットで理解しておくことが、応用力を養う上でとても大切です。
この記事のポイントまとめ
- 弁済: 債務の内容を実現し、債務を消滅させる行為。基本。
- 第三者弁済: 原則有効だが、①一身専属的債務、②禁止特約、③債務者の意思に反する場合(正当な利益を有する者以外は不可)は制限あり。
- 弁済の相手: 受領権限者。例外的に「受領権者としての外観を有する者」への善意無過失の弁済も有効(民法478条)。
- 弁済場所: 特約なければ原則債権者の住所(持参債務)。特定物引渡しは例外(物が存在した場所)。
- 弁済の提供: 現実の提供と口頭の提供。提供すれば債務不履行責任を免れる(民法492条)。
- 代物弁済: 債権者の承諾を得て別の物で弁済する契約。不動産は登記完了で効力発生(民法482条)。契約不適合責任も負う可能性あり。
- 代位弁済と求償権: 保証人などが弁済すると、①弁済による代位(債権者の地位・権利が移転)が生じ、②求償権(立て替えた分の請求権)を取得する(民法499条、500条、459条など)。
これらのルールは、それぞれ独立しているようでいて、相互に関連し合っています。一つ一つ正確に理解することはもちろん、全体像の中で各制度がどのような役割を果たしているのかを意識すると、より深く理解できるようになりますよ。関連する知識(時効援用権者など)と結びつけたり、テキストの具体的な事例問題を解いたりしながら学習を進めると、記憶にも定着しやすくなります。

宅建合格目指して、一歩一歩着実に知識を積み重ねていきましょう!今回の記事が、あなたの学習の一助となれば嬉しいです。頑張ってくださいね!