「国土利用計画法(こくどりようけいかくほう)」って、ちょっととっつきにくいな…と感じていませんか?「事後届出?事前届出?何が違うの?」「面積の数字がいっぱい出てきて覚えられない!」「そもそも何のための法律なの?」といった疑問を持っている方も多いかもしれませんね。
この国土利用計画法は、私たちの土地利用に関する大切なルールを定めた法律です。特にバブル期のような異常な地価高騰を防いだり、土地が投機(お金儲け)目的だけで売買されたりするのを防ぐための重要な役割を担っています。
そこでこの記事では、国土利用計画法のキホンから、「届出制度(事後届出・事前届出)」について、それぞれの違いやポイント、覚えなければいけない数字などを、比較しながらわかりやすく解説していきます。

複雑に見える国土利用計画法の届出制度がスッキリ整理でき、面積要件や手続きの違いも自信を持って答えられるようになりますよ!
<この記事でわかること>
- 国土利用計画法が作られた目的
- どんな土地取引で届出が必要になるかの3つの条件
- 試験で重要な「事後届出」と「事前届出」の具体的な違い
- 絶対に覚えるべき届出対象面積の数字
- 届出の手続き、勧告、罰則、例外について
国土利用計画法のキホン | 目的と届出が必要な取引とは?
まずは、国土利用計画法がどんな法律なのか、基本的なところから見ていきましょう。
国土利用計画法ってどんな法律?目的は?
国土利用計画法は、その名の通り、日本の国土を総合的かつ計画的に利用するためのルールを定めた法律です。特に、土地の投機的な取引を抑制し、地価の異常な高騰を防ぐこと、そして、適正で合理的な土地利用を確保することを大きな目的としています。
昔、土地の値段がものすごく上がって大騒ぎになった時代(バブル経済)がありましたが、ああいうことを繰り返さないように、という目的もあるんですね。
そのために、この法律では、一定規模以上の土地取引について、事前に計画をチェックしたり(許可制)、取引後に利用目的などをチェックしたり(届出制)する仕組みを設けているんです。
届出が必要になるのはどんな時?3つのポイント
国土利用計画法で特に重要なのが「届出制」です。一定の条件を満たす土地取引を行った場合、都道府県知事(窓口は市町村)に届け出る義務があります。では、どんな場合に届出が必要になるのでしょうか?ポイントは以下の3つです。
【届出が必要になる取引の3つの条件】
- 権利の移転または設定があること
- 土地に関する所有権、地上権、賃借権(またはこれらの権利の取得を目的とする権利)を移転したり、設定したりする契約である必要があります。
- 売買、交換、代物弁済、予約、譲渡担保設定などは対象です。
- 抵当権の設定は、土地の利用権そのものを移すものではないので、対象外です。相続や法人の合併なども契約ではないので対象外。
- 対価の授受があること
- 権利の移転や設定が、有償(=対価の支払いがある)で行われることが必要です。
- 売買代金や交換差金などが支払われる場合です。
- 贈与(タダであげること)のように対価の授受がない場合は、対象外です
- 一定面積以上の土地取引であること
- 取引される土地の面積が、定められた基準面積以上である必要があります。この面積要件は、後で詳しく説明しますが、場所によって異なります。
(例:市街化区域なら原則2,000㎡以上)
- 取引される土地の面積が、定められた基準面積以上である必要があります。この面積要件は、後で詳しく説明しますが、場所によって異なります。
この3つの条件すべてに当てはまる土地取引を行った場合に、原則として国土利用計画法に基づく届出が必要になります。
許可制は無視してOK?
国土利用計画法には、届出制のほかに、より規制の厳しい「許可制」という制度もあります。これは、特に厳格な管理が必要な「規制区域」内での土地取引について、契約前に知事の許可を得なければならないというものです。
しかし、この「規制区域」は現在、日本全国で指定されている場所がありません。そのため、宅建試験において、許可制に関する問題はほとんど出題されていません。
もちろん、法律上は許可制も存在しますが、試験対策としては、「届出制(事後届出・事前届出)」の内容に絞って学習するのが最も効率的です!細かい許可制のルールまで追いかける必要は、今のところないと考えて大丈夫でしょう。
【徹底比較】事後届出と事前届出の違いをマスターしよう
さて、ここからが本題の「届出制」です。国土利用計画法の届出制には、「事後届出制」と「事前届出制」の2種類があります。この2つの違いを正確に理解し、比較して覚えることが、試験攻略のカギとなります!
事後届出制とは? – 通常の土地取引のチェック機能
まずは基本となる「事後届出制」から見ていきましょう。
- 制度の目的・対象区域
- 事後届出制は、一定規模以上の土地取引が行われた後に、その土地の利用目的などをチェックし、適正で合理的な土地利用を促すための制度です。原則として、日本全国の土地取引が対象となります(ただし、後述する事前届出が必要な区域などを除く)。
- 届出対象面積
- 届け出が必要となる面積は、土地の所在する区域によって異なります。この数字は絶対に暗記してください!
- 市街化区域 ⇒ 2,000㎡以上
- 市街化区域以外の都市計画区域(=市街化調整区域 or 非線引都市計画区域) ⇒ 5,000㎡以上
- 都市計画区域外 ⇒ 10,000㎡(1ヘクタール)以上
- 届け出が必要となる面積は、土地の所在する区域によって異なります。この数字は絶対に暗記してください!
- 届出者
- 届け出る義務があるのは、土地の権利を取得した人、つまり買主です。
- 届出期間
- 契約を締結した日(予約の場合は予約完結日)から起算して2週間以内に届け出なければなりません。
- 届出先
- 土地の所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出ます。
- 一団の土地(いとだんのとち)の考え方
- 個々の土地面積が基準未満でも、「一団の土地」として買主が取得した面積の合計が基準面積以上になれば、届出が必要になります。
- 「一団の土地」とは、土地利用上、一体利用が可能なひとまとまりの土地のことです。物理的な一体性だけでなく、計画的な一体性(例:マンション開発のために複数の土地を買い集める)も考慮されます。
- <例えば>買主Aが、売主Xから1,000㎡、売主Yから700㎡、売主Zから500㎡の隣接する市街化区域の土地を、一連の計画で購入した場合、合計2,200㎡となり、個々の面積は2,000㎡未満でも、Aは事後届出が必要
- 審査内容と「助言」
- 知事は、届け出された土地の利用目的について審査します。利用目的が土地利用基本計画などに適合しない場合、知事は必要な助言をすることができます。
- 勧告
- 助言をしても適切な利用目的への変更が期待できない場合、知事は届け出をした日から原則として3週間以内に、利用目的の変更を勧告することができます。
- 事後届出では、取引価格(対価)についての勧告や、契約の中止を勧告することはできません。あくまで「利用目的」に関する勧告だけです。
- 勧告を無視した場合
- 勧告は、あくまで行政指導なので、従わなくても罰則はありません。ただし、勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがあります。
- 無届出・虚偽届出の場合
- 届け出が必要なのにしなかったり、嘘の届け出をしたりした場合は、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金という重い罰則があります。
- ただし、届け出をしなくても、契約(売買など)自体の効力は有効です。無効にはなりません。
- 勧告無視は罰則なし、無届出は罰則あり!契約はどちらも有効!ここは重要!
事前届出制とは? – 地価高騰エリアのブレーキ役
次に、より規制が厳しい「事前届出制」です。これは特定のエリアでのみ適用されます。
- 制度の目的・対象区域
- 事前届出制は、地価が急激に上昇している、またはそのおそれがある地域(注視区域・監視区域)において、投機的な土地取引を抑制することを目的としています。契約を結ぶ前に届け出をさせ、価格や利用目的をチェックします。
- 注視区域・監視区域は、都道府県知事などが指定します。
- 届出対象面積
- 届け出が必要となる面積は、原則として事後届出と同じ基準です(市街化2,000㎡~など)。
ただし、特に地価高騰が著しい監視区域内については、都道府県の条例で、事後届出の基準面積よりも小さい面積で届け出が必要となるように定めることができます。(例:市街化区域500㎡以上など)
- 届け出が必要となる面積は、原則として事後届出と同じ基準です(市街化2,000㎡~など)。
- 届出者
- 事後届出と違い、土地の権利を移転または設定しようとする当事者双方(売主と買主)が届け出る必要があります。
- 届出期間
- 契約を締結しようとする前(契約前)に届け出なければなりません。具体的には、契約締結予定日の6週間前までに届け出るのが一般的です。
- <ポイント>「事前」届出なので契約の前!届出者は「双方」!
- 届出先
- 事後届出と同じく、市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出ます。
- 一団の土地の考え方
- 事前届出の場合、「一団の土地」の判断は、当事者のいずれか一方が取得または移転しようとする土地の面積の合計で判断されます。
- 届出内容の変更
- 届け出た後で、予定対価(価格)を増額する場合や、土地の利用目的を変更する場合は、改めて事前届出が必要になります。
- 予定対価を減額するだけなら、再度の届け出は不要です。
- 勧告
- 知事は、届け出があった日から原則として6週間以内に、審査の結果、問題があると判断した場合に勧告をすることができます。
勧告の内容は、事後届出よりも厳しく、以下の3つが可能です- 利用目的の変更の勧告
- 契約の締結の中止の勧告
- 予定対価(価格)の引き下げの勧告
- 事前届出では、価格や契約中止の勧告もできる点が大きな違いです!
- <ポイント>勧告までの期間は「6週間」!事後(3週間)より長い!
- 知事は、届け出があった日から原則として6週間以内に、審査の結果、問題があると判断した場合に勧告をすることができます。
- 勧告を無視した場合・無届出の場合
- 事後届出と同様、勧告に従わなくても罰則はなく、公表されるだけです。届け出をしなかったり、虚偽の届け出をしたりした場合の罰則(6ヶ月懲役or100万罰金)や、契約自体の効力は有効である点も事後届出と同じです。
- ただし、事前届出の場合、届け出をしてから勧告しない旨の通知を受けるか、または6週間が経過するまでは、契約を締結してはいけません。(契約締結制限期間)
事後届出と事前届出の比較まとめ表
これまで見てきた事後届出と事前届出の違いを、表でまとめて整理しましょう!ここが一番の重要ポイントです!
<事後届出と事前届出の比較表>
項目 | 事後届出制 | 事前届出制 |
---|---|---|
目的 | 土地利用の適正化(利用目的チェック) | 投機的取引の抑制(価格・利用目的チェック) |
対象区域 | 原則全国 (事前届出対象区域等を除く) | 注視区域・監視区域 |
届出対象面積 | ・市街化区域: 2,000㎡以上 ・その他都市計画区域: 5,000㎡以上 ・都市計画区域外: 10,000㎡以上 ※監視区域内は、条例でこれより小さい面積に設定可能 | |
届出者 | 買主(権利取得者) | 当事者双方(売主・買主) |
届出期間 | 契約締結後2週間以内 | 契約締結前 (契約締結制限期間あり: 原則6週間) |
届出先 | 市町村長経由で都道府県知事 | |
一団の土地判断 | 買主基準 | 当事者一方基準 |
助言 | あり(利用目的について) | 制度なし |
届出内容変更時の再届出 | - (事後なので) | 対価増額、利用目的変更の場合に必要 (減額は不要) |
勧告の内容 | 利用目的の変更のみ (中止・価格勧告は不可) | 契約中止、対価引下げ、利用目的変更 |
勧告の時期 | 届出から3週間以内 | 届出から6週間以内 |
勧告無視 | 罰則なし、公表されることがある | |
無届出・虚偽届出 | 6ヶ月以下の懲役 or 100万円以下の罰金 | |
契約の効力 | 有効 (無届出でも契約は有効) |

この表の内容をしっかり頭に入れれば、国土利用計画法の問題は怖くありません!違いを意識して覚えましょう!
届出が不要になる例外ケース
最後に、これまで見てきた届出の条件(権利移転、対価、面積)をすべて満たす場合でも、特別に届出が不要とされるケースがあります。これも試験で問われることがあるので、確認しておきましょう。
【届出が不要となる主な例外】
- 民事調停法による調停に基づく場合など、裁判所の手続きを経て権利が移転する場合
- 当事者の一方または双方が国、地方公共団体、その他政令で定める法人(地方住宅供給公社など)である場合
- 農地法第3条第1項の許可を受けて、農地や採草放牧地の権利を取得する場合(農地法でチェックされるため)
- (その他、相続、法人の合併、滞納処分、強制執行など、契約によらない権利移転の場合も不要です)
これらのケースに該当すれば、たとえ面積要件などを満たしていても、国土利用計画法の届出は不要です。特に、国や地方公共団体が関わる場合や、農地法の許可を受けている場合はよく問われます。
まとめ
今回は、国土利用計画法、特に試験で重要な「届出制」について詳しく解説しました。地価の安定と適正な土地利用を目指す、大切な法律であることがお分かりいただけたでしょうか。
事後届出と事前届出の違いは、宅建試験の超頻出ポイントです。最後に、重要事項をもう一度確認しましょう!
- 国土利用計画法は、地価高騰抑制と土地利用適正化が目的です。
- 届出が必要なのは、①権利(所有権・地上権・賃借権等)の移転・設定、②対価の授受、③一定面積以上、の3条件を満たす場合です。
- 届出制には「事後届出」と「事前届出」があります(試験対策上、許可制はほぼ不要)。
- 事後届出:対象は原則全国、届出者は買主、期間は契約後2週間以内、勧告は利用目的のみ(3週間以内)。
- 事前届出:対象は注視・監視区域、届出者は当事者双方、期間は契約前、勧告は中止・価格・利用目的(6週間以内)。
- 届出対象面積:市街化2,000㎡~、その他都計5,000㎡~、都計外10,000㎡~(監視区域は例外あり)。
- 勧告に従わなくても罰則はないが公表される。
- 無届出・虚偽届出は罰則(6ヶ月懲役or100万罰金)あり。ただし、契約自体は有効。
- 国・地方公共団体が当事者の場合や、農地法3条許可の場合などは届出不要。

数字や期間、当事者など、覚えることは多いですが、比較表などを活用して整理すれば必ずマスターできます!頑張ってくださいね!