【宅建士】地役権・地上権・法定地上権の違いは?設定要件や対抗力も解説!

権利関係

「地役権(ちえきけん)」「地上権(ちじょうけん)」「法定地上権(ほうていちじょうけん)」、この3つの権利って、どれも土地を利用する権利というのはわかるけど、名前が似ていて違いがはっきりしない…なんて、モヤモヤしていませんか?それぞれの目的や効力、どうやって設定されるのか、登記は必要なのか…など、整理するのが大変ですよね。特に、法定地上権の成立要件なんて、4つもあって覚えるのが一苦労!と、頭を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

たとえば、「自分の土地(袋地)から公道へ出るために、隣の土地を通らせてもらう権利」や、「他人の土地に建物を建てるための権利」、「抵当権が実行されて土地と建物の持ち主が変わってしまった場合に建物を守る権利」…これらが、3つのうちどれに該当するのか、パッと答えられますか?それぞれの権利が持つ力(特に第三者への対抗力)の違いも、しっかり理解しておきたいポイントです。

この記事では、「地役権」「地上権」「法定地上権」について、それぞれの意味、目的、設定方法、効力(対抗力)、そして重要な性質や成立要件などを、一つ一つ丁寧に、そして徹底的に比較解説していきます!

AYUMI
AYUMI

権利関係は覚えることが多いですが、一つずつ丁寧に見ていけば大丈夫ですよ!一緒に頑張りましょう!

<この記事でわかること>

  • 「地役権」の基本(要役地・承役地、性質、登記、対抗力)について理解できる
  • 「地上権」の基本(賃借権との違い、効力、設定、借地借家法)について理解できる
  • 「法定地上権」の基本(必要性、超重要な成立要件4つ、効果)について理解できる
  • 3つの権利の目的、効力、設定方法、対抗力などの違いが明確になる
  • 試験で問われやすいポイントや注意点が整理できる

【地役権】あなたの土地の価値を高める!承役地を利用する権利とは?

まずは「地役権(ちえきけん)」から見ていきましょう。少し専門的な響きかもしれませんが、私たちの身近な場面でも関わってくる権利なんですよ。

地役権の基本:要役地のために承役地を使う権利

地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利のことです(民法第280条)。

…少し硬い表現ですよね。もっと分かりやすく言うと、「自分の土地(要役地 ようえきち)をもっと便利にするために、お隣さんなどの他の土地(承役地 しょうえきち)の一部を利用させてもらう権利」というイメージです。

具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 通行地役権:自分の土地が公道に面していない(袋地)場合に、公道に出るために隣の土地を通行させてもらう。
  • 眺望地役権:自分の家からの良い眺めを確保するために、隣の土地に一定の高さ以上の建物を建てないようにしてもらう。
  • 送水地役権:自分の畑に水を引くために、他の人の土地に水路(水管)を通させてもらう。
  • 日照地役権:自分の家の陽当たりを確保するために、隣の土地に建物を建てる際に制限を設ける。

あくまで「要役地という特定の土地の利便性を高める」のが目的です。その土地の所有者個人のため(例えば「隣の庭がきれいだから散歩したい」といった理由)に設定されるものではない、という点がポイントですね。

地役権はどうやって設定する?登記は必要?

地役権は、原則として、要役地の所有者と承役地の所有者との間の合意(地役権設定契約)によって設定されます。

そして、その設定された地役権の内容を第三者にもわかるように公示し、権利を主張できるようにするために、登記をすることができます。登記は義務ではありませんが、後述する「対抗力」を得るためには非常に重要です。

登記は、承役地(利用される側)の登記記録(不動産登記簿の乙区という権利部)に、以下の事項などを記載して行われます。

  • 目的(例:通行、送水など)
  • 範囲(例:東側幅2メートルなど、図面を添付することも)
  • 要役地(どの土地のために設定された地役権なのかを特定)
  • 設定の年月日、地代(もし定めがあれば)、存続期間(もし定めがあれば)など

地役権が設定されると、要役地の登記記録(甲区または乙区)にも、「この土地のために、〇〇の土地(承役地)に地役権が設定されていますよ」という情報が、登記官の職権で記録されます。

【登記の前提】
地役権設定登記を申請するには、その前提として、要役地と承役地の両方に所有権の登記がされている必要があります。まだ所有権登記がされていない土地には、地役権の登記もできない、ということです。細かい点ですが、過去問で問われたこともあります。

地役権の重要な性質:付従性・随伴性・不可分性

地役権には、担保物権(抵当権など)にも見られる、いくつかの重要な性質があります。特に「付従性(ふじゅうせい)」「随伴性(ずいはんせい)」「不可分性(ふかぶんせい)」の3つはしっかり押さえておきましょう。

  1. 付従性(ふじゅうせい)

    地役権は、あくまで要役地という主役(主たる権利)の価値を高めるための脇役(従たる権利)です。そのため、地役権だけを要役地から切り離して、単独で譲渡したり、地役権だけを担保に入れたり(抵当権を設定したり)することはできません(民法第281条第1項本文)。常に要役地と運命を共にする、というイメージです。

    例外:ただし、設定行為で「地役権は要役地と分離して譲渡できる」といった別段の定めをすることも可能です(民法第281条第1項ただし書)。

  2. 随伴性(ずいはんせい)

    要役地の所有権が第三者に移転した場合(例:Aさんが要役地をCさんに売却した場合)、原則として、地役権もそれに伴って自動的にCさんに移転します(民法第281条第1項本文)。地役権は土地にくっついて一緒に移動するイメージですね。新しい要役地の所有者であるCさんは、引き続き承役地Bを利用できます。

    例外:これも付従性と同様に、設定行為で「要役地が譲渡されても地役権は移転しない」といった別段の定めが可能です(民法第281条第1項ただし書)。

  3. 不可分性(ふかぶんせい)
    地役権は「分けることができない」という性質を持っています。これは少し複雑ですが、主に土地が共有状態にある場合や、土地が分割された場合に問題となります。
    • 共有の場合:土地(要役地または承役地)が複数人の共有になっている場合、共有者の一人が自分の持分についてだけ地役権を消滅させることはできません(民法第282条第1項)。また、共有者の一人が時効によって地役権を取得すれば、他の共有者全員も地役権を取得します(民法第284条第1項)。逆に、地役権が時効によって消滅する場合(消滅時効)は、権利を行使できる共有者全員について時効の中断・停止が行われない限り、時効は完成しません(民法第292条)。
    • 土地の分割・一部譲渡の場合:要役地がAさんとA’さんに分割されたり、一部が第三者に譲渡されたりした場合でも、地役権は原則としてその各部分のために(または各部分の上に)存続します(民法第282条第2項)。承役地が分割された場合も同様です。

不可分性、特に時効との関係はややこしいですよね。簡単に覚えるコツは、「権利の発生・存続に有利なこと(取得時効の完成、消滅時効の中断・停止)は共有者の一人でもOK!権利の消滅につながること(取得時効の中断・停止、消滅時効の完成)は共有者全員でないとダメ!」と整理すると、判断しやすくなりますよ!

地役権の対抗力:承役地の新所有者に主張できる?

地役権を設定した後、承役地(利用される側の土地)が第三者Dさんに売却されたとします。この場合、要役地の所有者(Aさん)は、新しい承役地の所有者Dさんに対して、「ここは私の土地のために使わせてもらう権利(地役権)がありますよ!」と主張(対抗)できるのでしょうか?

これは、物権変動の対抗要件の問題です。原則として、地役権の設定登記があれば、対抗できます(民法第177条)。登記によって、Dさん(第三者)にも地役権の存在が公示されているからです。Dさんが地役権の存在を知っていたかどうか(善意・悪意)は関係ありません。

逆に言えば、登記がなければ、原則として対抗できません。たとえDさんが地役権の存在を知っていた(悪意)としても、登記がない限り、AさんはDさんに地役権を主張できないのが原則です。

【判例による例外】
ただし、特に通行地役権については、最高裁判所の判例で例外が認められています。たとえ登記がなくても、

  1. その通路が継続的に使用されており、かつ
  2. 通路が開設されているなど、外部から客観的にその存在が認識できる状態にある場合

には、承役地の譲受人(Dさん)が地役権の存在を知らなかったとしても、要役地所有者は地役権を対抗できる、とされています。長年、明らかに通路として使われているようなケースですね。

AYUMI
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原則は登記が必要だけど、例外もあるんですね!でも、試験対策としてはまず「物権の対抗要件は登記!」としっかり覚えるのが基本ですね。

地役権の時効取得

地役権は、契約によって設定されるだけでなく、一定の要件を満たせば、時効によって取得することも可能です(時効取得)。

ただし、どんな地役権でも時効取得できるわけではありません。民法第283条では、「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるもの」に限って時効取得が認められる、と規定されています。

例えば、単に「眺めが良いから」という理由で隣の土地を眺めていただけでは、眺望地役権を時効取得することはできません。しかし、自分で通路を明確に開設して、20年間(または10年間※占有開始時に善意無過失の場合)通行し続けたような場合には、通行地役権の時効取得が認められる可能性があります。


【地上権】土地を借りて建物を所有!借地権より強い物権とは?

次に「地上権(ちじょうけん)」について見ていきましょう。これは、土地の「賃借権(ちんしゃくけん)」、いわゆる「借地権(しゃくちけん)」とよく比較される権利です。その違いを意識することが、理解のポイントになりますよ!

地上権の基本:工作物・竹木所有のために土地を使う権利

地上権とは、他人の土地において、工作物(こうさくぶつ)または竹木(ちくぼく)を所有するために、その土地を使用する権利のことです(民法第265条)。地役権と同じく、物権(土地を直接的に支配できる権利)の一つです。

  • 工作物:建物、トンネル、橋、モノレール、高圧線、地下鉄、広告塔など、土地に設置される様々な施設や構造物を指します。
  • 竹木:文字通り、竹や樹木のことです。植林などを目的として設定されることがあります。

「あれ?これって普通の借地権(土地の賃貸借)と何が違うの?」
そう思われた方、良いところに気が付きましたね!目的(他人の土地に建物を建てる)は非常に似ています。しかし、地上権は「物権」、賃借権は「債権」という法的な性質が根本的に異なり、それによって権利の強さや内容に大きな違いが出てくるんです。

地上権の強力な効力:譲渡・転貸・担保設定が自由!

地上権が「物権」であることの最大のメリットであり、賃借権との決定的な違いは、その権利の処分が非常に自由である点にあります。

地上権を持っている人(地上権者)は、土地の所有者(地主、地上権設定者)の承諾を得ることなく、以下の行為を自由に行うことができます。

  • 地上権の譲渡:持っている地上権そのものを、第三者に自由に売り渡したり、譲ったりできます。
  • 土地の転貸:地上権に基づいて使用している土地を、さらに第三者に貸す(又貸しする)ことができます。
  • 地上権への抵当権設定:持っている地上権を担保に入れて、金融機関などからお金を借りることができます。

【賃借権との比較】
これは、土地の「賃借権」とは大きく異なります!賃借権の場合、賃借人(借りている人)が賃借権を譲渡したり、借りている土地を転貸(又貸し)したりするには、原則として賃貸人(地主)の承諾が必要です(民法第612条)。もし無断で譲渡や転貸をすると、賃貸借契約を解除されてしまう可能性があります。これに対して、地上権は物権なので、そのような地主の承諾は一切不要!非常に強力で自由な権利なのです。

地上権の設定:期間や地代はどうなる?

地上権は、土地の所有者(地上権設定者)と、地上権を取得する人(地上権者)との間の契約(地上権設定契約)によって設定されます。

そして、これも物権なので、設定された地上権を第三者(例えば、後からその土地を買った人)に対抗するためには、原則として登記が必要です(民法第177条)。登記は、土地の登記記録(乙区)に行われます。地上権者は設定者(地主)に対して登記手続きへの協力を求めることができます。

設定の際に定める「期間」と「地代」については、民法上、以下のような特徴があります。

  • 存続期間:民法上は、地上権の存続期間について特に上限も下限も定められていません。10年でも、50年でも、100年でも有効です。それどころか、判例では、当事者が合意すれば「永久」とする定めも有効とされています!
  • 地代(ちだい):地上権を設定する際に、必ずしも地代(土地の使用料)を支払う必要はありません。当事者の合意があれば、無償(タダ)で地上権を設定することも有効です。もちろん、有償とすることも可能で、地代を定める場合はその額や支払時期などを登記することもできます。登記された地代は、後から土地を譲り受けた人にも主張できます。
AYUMI
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譲渡も転貸も自由で、期間は永久でもOK、地代はタダでもOKなんて、地上権者にとってはすごく有利な権利ですよね!逆に言うと、土地所有者にとってはかなり強い制約を受けることになります。だから実際には、地主さんが積極的に地上権を設定するケースは少なく、賃借権(借地権)の形で土地を貸す方が圧倒的に多いんです。

地上権と借地借家法の関係:建物所有目的の場合

ここで非常に重要な注意点があります。それは、地上権の中でも「建物の所有」を目的とする場合です。この場合、民法のルールだけでなく、借地借家法(しゃくちしゃっかほう)という特別な法律が優先的に適用されることになるのです(借地借家法第1条、第2条1号)。

借地借家法が適用されると、民法の原則が一部修正されます。特に以下の2点は超重要ポイントです!

  1. 存続期間の最低保証

    民法では永久でもOKでしたが、借地借家法が適用されると、当事者がどんなに短い期間を定めても(例えば「10年」と契約しても)、あるいは期間を定めなかったとしても、最初の存続期間は最低でも30年となります(借地借家法第3条)。30年より短い期間を定めても、自動的に30年に引き伸ばされます。更新後の期間にも最低保証があり、最初の更新後は20年、2回目以降の更新後は10年が最低期間となります(借地借家法第4条)。つまり、建物を所有する目的の場合、民法のように「永久」は認められません。

  2. 対抗力の特例
    本来、地上権という物権を第三者に対抗するには、地上権そのものの設定登記が必要でした。しかし、借地借家法が適用される「建物所有目的」の地上権の場合、たとえ地上権自体の登記がなくても、その土地の上にある建物について、地上権者自身の名義で所有権保存登記または所有権移転登記がされていれば、地上権を第三者(例えば、後から土地を買い受けた人)に対抗することができる、という特例が認められています(借地借家法第10条第1項)。

【超重要ポイント!】
この「建物登記による対抗力」は、よく問われる論点の一つです!「地上権(または借地権)の登記がなくても、自分名義の建物の登記があれば、土地の権利も対抗できる!」と、しっかり、確実に覚えてくださいね。これは、建物所有目的の土地「賃借権」(借地権)の場合も全く同じルールです。


【法定地上権】抵当権実行でピンチ!?建物を守るための切り札

最後に、3つ目の「法定地上権(ほうていちじょうけん)」です。これは、これまで見てきた地役権や地上権とは異なり、当事者の契約(合意)によって設定されるのではなく、一定の要件が揃った場合に、法律の規定によって当然に発生する特殊な地上権です。

法定地上権とは?なぜ必要なの?

法定地上権とは、「もともと土地と建物が同じ人のものだったのに、土地か建物(または両方)に設定された抵当権が実行されて競売された結果、土地と建物の所有者が別々になってしまった場合に、建物の所有者のために、法律が自動的に地上権が成立したとみなす」という制度です(民法第388条本文)。

法定地上権発生の基本的な流れ
①抵当権設定時:Aさんが土地と建物の両方を所有。土地(または建物、または両方)にB銀行の抵当権を設定。
②抵当権実行(競売):Aさんがローンを返せなくなり、B銀行が抵当権を実行。競売の結果、土地はCさんが、建物はDさんが落札(または土地はAさんのまま、建物だけDさんが落札など、所有者が別々になるパターンを示す)。
③法定地上権発生:競売によって土地と建物の所有者が別々になった瞬間、建物所有者Dさんのために、Cさんの土地の上に自動的に「法定地上権」が成立する。

なぜこんな制度が必要なのでしょうか?

もし法定地上権という制度がなかったら、上の例で、競売で建物を手に入れたDさんは、土地を使う権利がありません。そうなると、土地の所有者になったCさんから「あなたの建物は私の土地の上に無断で建っているのだから、建物を壊して土地を明け渡しなさい!」と要求されてしまう可能性があります。まだ十分に使える価値のある建物が取り壊されてしまうのは、Dさん個人にとってはもちろん、社会全体で見ても大きな経済的損失ですよね。

また、建物を担保にお金を貸していた金融機関(抵当権者)にとっても、建物が取り壊されて価値がなくなってしまうと、貸したお金を回収できなくなる恐れがあります。

そこで、このような特殊な状況下で、建物の存続を図り、社会経済的な損失を防ぐために、法律が特別に「地上権が成立したものとみなす」ことにしたのです。まさに、建物を救済するための「法律による切り札」と言えるでしょう。

AYUMI
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なるほど、困った状況を法律が助けてくれる、セーフティネットのような役割なんですね。

試験最重要!法定地上権の成立要件4つを完全マスター!

法定地上権は、法律が認める特別な権利なので、どんな場合にでも成立するわけではありません。成立するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けてしまうと、法定地上権は成立しません。ここは一つ一つの要件を正確に、完璧に覚えましょう!

【法定地上権の成立要件】(民法第388条)

  1. 【要件1】抵当権設定時に、土地の上に建物が存在すること
    • 抵当権を設定したその瞬間に、土地の上に物理的に建物が存在していることが必要です。
    • 更地(建物が何もない土地)に抵当権を設定し、その後で建物が建てられた場合は、たとえ競売の時点では立派な建物が建っていても、法定地上権は成立しません
    • 建物の登記があるかどうか、建築中の未完成建物かどうかは、原則として問いません。建物としての実態(基礎や屋根・壁があるなど)があればOKとされています。
    • 土地に複数の抵当権(一番抵当、二番抵当…)が設定されている場合は、一番抵当権が設定された時点で建物が存在したかどうかで判断します。
    • 建替えの場合:抵当権設定時に建物が存在し、その後、抵当権者の同意などを得ずに建物が建て替えられた場合、原則として法定地上権は成立しませんが、判例では一定の要件(旧建物と同程度の規模・用途など)を満たせば、例外的に新しい建物について法定地上権の成立を認める余地を示しています(複雑なので、まずは原則をしっかり押さえましょう)。
  2. 【要件2】抵当権設定時に、土地と建物の所有者が同一であること
    • 抵当権を設定したその瞬間に、土地の所有者と、その上に建っている建物の所有者が、同一人物であることが必要です。
    • 例えば、土地は夫名義、建物は妻名義のように、法律上の所有者が異なっている場合は、たとえ夫婦であっても所有者は別人なので、法定地上権は成立しません
    • 抵当権設定時に所有者が同一であれば、その後に、競売が開始されるまでの間に土地や建物の所有権が移転して所有者が別々になったとしても、原則として法定地上権は成立します。あくまで「抵当権設定時」の所有者が基準です。
    • 逆に、抵当権設定時には所有者が異なっていたが、その後たまたま同一人物の所有になったとしても、原則として法定地上権は成立しません。
  3. 【要件3】土地または建物の一方、あるいはその両方に抵当権が設定されていること
    • 以下のいずれかのパターンで抵当権が設定されていることが必要です。
      • 土地だけに抵当権が設定されている場合
      • 建物だけに抵当権が設定されている場合
      • 土地と建物の両方に共同で抵当権が設定されている場合
    • どのパターンであっても、次の要件④の結果、所有者が別々になればOKです。
  4. 【要件4】抵当権の実行(担保不動産競売等)により、土地と建物の所有者が異なるに至ったこと
    • 設定された抵当権が実行され、競売(または公売※税金滞納の場合など)が行われた結果として、土地と建物の所有者が別々の人になることが必要です。
    • 当事者間の話し合いによる売買(任意売却)などで所有者が別々になった場合には、法定地上権は成立しません。その場合は、当事者同士で土地の利用権(例えば賃借権など)について話し合って決めるべきだからです。

【法定地上権成立要件4つの確認チェックリスト】
法定地上権が成立するかどうか迷ったら、この4つを順番にチェック!

  • [  ] ① 抵当権を設定したとき、建物はあった?(更地じゃなかった?)
  • [  ] ② 抵当権を設定したとき、土地と建物の持ち主は同じ人だった?
  • [  ] ③ 土地か建物(または両方)に抵当権が付いていた?
  • [  ] ④ 競売(または公売)の結果、土地と建物の持ち主が別の人になった?(任意売却じゃない?)

⇒ 全部「YES」なら、法定地上権が成立します! 一つでも「NO」があれば成立しません。

法定地上権が成立したらどうなる?

上記の4つの要件をすべて満たして、めでたく法定地上権が成立すると、具体的にどのような効果が生じるのでしょうか?

  • 権利の発生:建物所有者は、法律上当然に、その建物を所有するために必要な範囲で土地を利用する権利(地上権)を取得します。特別な手続きは不要です。
  • 対抗力:この法定地上権は、法律に基づいて発生する非常に強力な権利なので、登記がなくても、土地の新所有者やその他の第三者に対して「私にはこの土地を使う法定地上権があります!」と主張(対抗)することができます。
  • 地代:通常の地上権では無償も可能でしたが、法定地上権はタダではありません。地代は有償です。建物所有者は土地所有者に対して、相当な地代を支払う義務があります。地代の額は、まずは当事者間の協議で決めますが、話がまとまらない場合は、当事者の請求によって裁判所が決定します(民法第388条後段の類推適用)。
  • 存続期間:法定地上権は建物の所有を目的とする権利なので、原則として借地借家法が適用されます。そのため、存続期間について当事者間で定めがない場合は、借地借家法第3条により30年となります。もちろん、期間満了時には更新も可能です。
AYUMI
AYUMI

自動的に成立して、登記もいらないなんて、すごく強力な権利ですね!でも、地代はちゃんと払わないといけないんだ…。タダで使えるわけではないんですね。


まとめ

お疲れ様でした!今回は、宅建試験の権利関係の中でも特に混同しやすい「地役権」「地上権」「法定地上権」という3つの重要な権利について、それぞれの意味、目的、設定方法、効力(対抗力)、性質、そして成立要件などを詳しく見てきました。

最後に、それぞれの権利のポイントを簡単に整理しておきましょう。

  • 地役権
    • 目的:自分の土地(要役地)の便益のため(例:通行、眺望)
    • 設定方法:原則として契約
    • 効力:土地に従属(付従性・随伴性)、不可分性あり
    • 対抗要件:原則として登記(例外判例あり)
    • 地代:任意(無償も可)
    • 借地借家法:適用なし
  • 地上権
    • 目的:工作物・竹木の所有のため(例:建物所有)
    • 設定方法:原則として契約
    • 効力:強力な物権。譲渡・転貸・担保設定が自由
    • 対抗要件:原則として登記(建物所有目的なら建物登記でも可)
    • 地代:任意(無償も可)
    • 存続期間:民法上は永久も可
    • 借地借家法:建物所有目的なら適用あり(最低期間30年など)
  • 法定地上権
    • 目的:抵当権実行時の建物保護
    • 設定方法:法律の規定により当然発生(契約ではない)
    • 成立要件:厳格な4要件(①設定時建物存在、②設定時同一所有者、③抵当権設定、④競売等)を全て満たす必要あり
    • 効力:通常の地上権と同様
    • 対抗要件:登記不要
    • 地代:有償(協議または裁判所が決定)
    • 存続期間:原則30年
    • 借地借家法:適用あり

これらの権利は、目的(何のために土地を使うのか)、権利の性質(物権か債権か、自由度はどれくらいか)、設定方法(当事者の合意か法律か)、第三者への対抗力(登記が必要か不要か、例外はあるか)、そして借地借家法という特別な法律が関係してくるかどうかなど、様々な点で違いがあります。

AYUMI
AYUMI

覚えることが多くて大変かもしれませんが、一つ一つクリアしていけば必ず合格が見えてきます!過去問演習も繰り返して、知識を定着させていきましょう!

この記事を書いた人
AYUMI

大学卒業後、2007年大手不動産企業に入社、2009年宅建士試験に合格(合格証明番号:09130433)。
営業業務を経て、広報担当として広報誌業務に従事。累計300人以上の不動産経営者、営業スタッフに取材執筆を実施。
家族は両親と姉。趣味は映画鑑賞、スポーツ観戦ほか。

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