マイホームを買ったり、土地を相続したり… 不動産を手に入れると、様々な税金がかかってきますよね。固定資産税は毎年かかる税金として有名ですが、「不動産取得税」という税金があるのを知っていますか? これは、不動産を取得した時に一度だけかかる税金なんです。
「え、不動産を買った時にも税金がかかるの?」「固定資産税と何が違うの?」「いくらくらい払うことになるんだろう…」って、ちょっと不安になりますよね。そうなんです、不動産取得税は、取得した不動産の評価額によっては、まとまった金額になることもある、決して無視できない税金なんです。
でも、安心してください! 不動産取得税には、住宅や土地に関する様々な軽減措置(税金を安くする特例)が用意されています。これらの制度をしっかり理解して活用すれば、納税額を大幅に抑えることができるんですよ!
この記事では、不動産取得税の基本的な仕組みから、具体的な計算方法、そして試験でも超重要な軽減措置の内容まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めبば、不動産取得税の全体像が掴め、どんな場合に税金がかかり、どうすれば安くなるのかがしっかり理解できるはずです!

不動産取得税は都道府県税です。つまり、皆さんが不動産を取得した場所の都道府県に納める税金なんですよ。
<この記事でわかること>
- 不動産取得税がどんな税金か(課税主体、納税義務者、課税タイミング)
- 不動産取得税の計算方法(課税標準と税率)
- 超重要!住宅や土地に関する軽減措置(特例)の内容と適用要件
- 不動産取得税がかからない「免税点」とは?
- 不動産取得税の申告・納税手続きの流れと注意点
不動産取得税って何?|基本の仕組みと課税されるタイミング
まずは、不動産取得税がどんな税金なのか、基本的なところから押さえていきましょう。
誰がいつ、どこに払う税金?
- 納税義務者: 不動産を取得した人(個人・法人の両方)です。
- 課税主体: その不動産が所在する都道府県です(道府県税)。
- 課税タイミング: 不動産を取得した時に課税されます。固定資産税のように毎年かかるものではなく、一度きりです。

取得した後に、都道府県から納税通知書が送られてくるのが一般的ですね。
ここで重要なポイントがいくつかあります。
- 有償・無償を問わない: 売買(購入)だけでなく、贈与、交換、建築(新築・増改築)などによって不動産を取得した場合も課税対象となります。
- 登記の有無は関係ない: 登記をしていなくても、現実に所有権を取得したと認められれば課税されます。
- 増改築の場合: 家屋の価値が増加した場合に限り、その増加した価値の部分について課税されます。
「取得」の定義が広いのがポイントです。ただで貰った(贈与)場合でも課税されるんですね。
課税対象となる「不動産」とは?(非課税ケースも解説)
不動産取得税の対象となる「不動産」とは、土地と家屋(建物)のことです。
- 土地: 宅地、田、畑、山林、原野など、あらゆる土地が含まれます。
- 家屋: 住宅、店舗、工場、倉庫など、屋根と壁がある建物全般を指します。
セカンドハウスや別荘も、もちろん課税対象です。(※利用頻度によって呼び名は変わりますが、不動産取得税の課税対象であることに違いはありません。)
土地と一体で取引されることが多い門、塀、庭木などの「工作物」や「立木」は、不動産取得税の課税対象にはなりません。
<非課税となる場合>
以下のようなケースでは、不動産を取得しても不動産取得税は課税されません。これも試験でよく問われます!
- 相続による取得
- 法人の合併による取得
- 一定の要件を満たす法人の分割による取得
- 包括遺贈による取得
- 包括遺贈とは:「私の財産の半分をAさんに遺贈する」のように、財産の割合を指定する遺贈のことです。
- (注意)特定遺贈:「この土地をBさんに遺贈する」のように、特定の財産を指定する遺贈は、課税対象となります。相続や包括遺贈との違いをしっかり区別しましょう!
- 国、都道府県、市町村などが取得した場合
- 公共事業のために収用された不動産の代替として取得した場合(一定の要件あり)
- 宗教法人や学校法人が、その本来の事業の用に供する不動産を取得した場合(一定の要件あり)
いくら払うの?不動産取得税の計算方法|課税標準と税率
では、実際に不動産取得税はどのように計算されるのでしょうか? 計算式はシンプルです。
不動産取得税額 = 課税標準 × 税率
「課税標準」と「税率」が分かれば計算できますね。それぞれ見ていきましょう。
課税標準は「固定資産税評価額」!売買価格じゃない!
ここが非常に重要なポイントです!
不動産取得税の課税標準となるのは、その不動産を取得した時の実際の売買価格や建築工事費ではありません。
原則として、固定資産課税台帳に登録されている価格(固定資産税評価額)が課税標準となります。

買った値段じゃないんですね!固定資産税評価額って、実際の取引価格より低いことが多いです。
一般的に、固定資産税評価額は、実際の市場価格(時価)の7割程度が目安とされています(地域や物件によって異なります)。ですから、実際に支払った金額よりも低い額を基準に税金が計算されることになるわけですね。
ただし、新築や増改築で、まだ固定資産課税台帳に価格が登録されていない場合は、都道府県知事が「固定資産評価基準」に基づいて決定した価格が課税標準となります。
「課税標準=固定資産税評価額」は絶対暗記! 売買価額や建築費とひっかけてくる問題に注意しましょう。
税率は原則4%、でも今は軽減措置で…?
不動産取得税の本則(本来の)税率は4%です。
しかし! 現在(2025年4月時点)、土地及び住宅を取得した場合の税率は、特例措置により3%に軽減されています。
- 土地: 3%
- 住宅(居住用家屋): 3%
- 住宅以外の家屋(店舗、事務所、工場など): 原則通り4%
この土地・住宅に対する3%への軽減措置は、現在のところ令和9年(2027年)3月31日までの適用予定となっています。税制は改正される可能性があるので、常に最新情報を確認するようにしましょう。
【計算例①】
固定資産税評価額が1,500万円の住宅(居住用)を取得した場合(軽減措置適用前と仮定)
課税標準:1,500万円
税率:3%
不動産取得税額:1,500万円 × 3% = 45万円
【最重要】軽減措置を使いこなそう!|住宅・土地の特例を徹底解説
さて、ここからが本番です! 不動産取得税には、負担を軽くするための様々な軽減措置(特例)があります。特に住宅やその敷地に関する特例は、適用できるかどうかで納税額が大きく変わるので、絶対に押さえておきましょう!
① 新築・中古住宅の価格から控除!課税標準の特例(1200万円控除など)
一定の要件を満たす住宅(家屋)を取得した場合、その住宅の課税標準(固定資産税評価額)から一定額を控除できる特例です。
【控除額】
- 新築住宅(未使用のもの): 1,200万円
- 中古住宅(使用されたもの): 新築された日に応じて定められた額(最大1,200万円、最低450万円 ※H9.4.1以降新築なら1,200万円)
- 認定長期優良住宅(新築)の場合: 1,300万円(令和8年3月31日まで)

評価額から最大1,200万円も引いてもらえるなんて、大きいですね!
【適用要件(共通)】
この控除を受けるためには、取得した住宅が以下の床面積要件を満たす必要があります。
- 床面積: 50㎡以上 240㎡以下 (戸建・マンション等)
- (例外)戸建て以外の貸家住宅(アパートなど): 40㎡以上 240㎡以下
床面積は、マンションの場合は共用部分按分床面積を含みます。不動産登記上の面積とは異なる場合があるので注意が必要です。
【適用要件(中古住宅の場合)】
中古住宅の場合は、上記の床面積要件に加えて、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 築年数要件:
- 木造・軽量鉄骨造など: 取得日前20年以内に新築されたもの
- 鉄骨造・RC造・SRC造など(耐火建築物): 取得日前25年以内に新築されたもの
- 新耐震基準適合要件:
- 上記1.の築年数を超えていても、新耐震基準(昭和56年6月1日以降の基準)に適合していることが証明されたもの(耐震基準適合証明書、住宅性能評価書などで証明)。
中古住宅の場合、築年数が古くても、新耐震基準に適合していれば控除を受けられる可能性があります! これは大きなポイントです。
【適用対象者】
- 新築住宅の場合: 個人・法人のどちらでも適用可能。
- 中古住宅の場合: 原則として個人が「自己の居住用」として取得した場合に限られます。(法人が取得した場合や、個人でも賃貸用として取得した場合は適用されません)
【計算例②】
固定資産税評価額が1,500万円の新築住宅(床面積100㎡)を取得した場合
課税標準(控除前):1,500万円
控除額:1,200万円
課税標準(控除後):1,500万円 – 1,200万円 = 300万円
不動産取得税額:300万円 × 3% = 9万円
軽減措置がない場合の税額は45万円でしたから、大幅に安くなりましたね!
もし住宅の評価額が1,200万円以下なら、この控除だけで課税標準がゼロになり、住宅に対する不動産取得税はかからないことになります。
② 土地の評価額が半分に!?宅地評価土地の課税標準の特例
次は土地に関する特例です。
宅地及び宅地比準土地(宅地と評価される土地、例えば市街化区域内の農地など)を取得した場合、その土地の課税標準(固定資産税評価額)を1/2として計算する特例です。
【計算例③】
固定資産税評価額が2,000万円の宅地を取得した場合
課税標準(特例適用前):2,000万円
課税標準(特例適用後):2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
不動産取得税額:1,000万円 × 3% = 30万円
もしこの特例がないと、2,000万円 × 3% = 60万円ですから、これも大きな軽減ですね。
この宅地の課税標準1/2の特例も、現在のところ令和9年(2027年)3月31日までの適用予定です。
③ 【応用編】土地の税額軽減措置(これが一番節税効果大!)
①②は課税標準(税金を計算する元になる額)を減らす特例でしたが、これは計算された税額そのものから、さらに一定額を差し引く(控除する)ことができる、非常に強力な軽減措置です。
この軽減措置は、一定の要件を満たす住宅用の土地を取得した場合に適用されます。
【控除される税額】
以下のA・Bのうち、いずれか多い方の額が、土地の不動産取得税額から控除されます。
- A: 45,000円
- B: (土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2) × (住宅の床面積 × 2(上限200㎡)) × 3%

計算式がちょっと複雑ですね…。
特にBの計算式はややこしいですが、簡単に言うと「その土地の上に建っている(または建てる予定の)住宅の面積に応じた土地の評価額に対応する税額分を、土地の税金から引いてあげますよ」という意味合いです。
【適用要件】
この税額軽減を受けるためには、土地と住宅について以下の要件を満たす必要があります。
- 土地の要件: 上記②の「宅地評価土地の課税標準の特例」が適用される土地であること。
- 住宅の要件: その土地の上にある(または取得後一定期間内に新築される)住宅が、上記①の課税標準の特例(1200万円控除など)の対象となる住宅(床面積50㎡以上240㎡以下など)であること。
- 取得時期の要件:
- 土地を先に取得した場合: 土地取得後3年以内に、その土地上に要件を満たす住宅が新築されること。(中古住宅取得や自己所有地への新築も対象)
- 住宅を先に取得した場合: 住宅の新築(または取得)後1年以内に、その敷地(土地)を取得すること。
【計算例④】
計算例②の新築住宅(評価額1,500万円、床面積100㎡)とその敷地である計算例③の宅地(評価額2,000万円、面積150㎡)を同時に取得した場合の土地の税額を計算してみましょう。
ステップ1:土地の税額を計算(軽減前)
課税標準:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
税額:1,000万円 × 3% = 30万円
ステップ2:控除額を計算
A:45,000円
B:計算します。
- 土地1㎡あたり評価額:2,000万円 ÷ 150㎡ = 約133,333円
- (133,333円 × 1/2) × (住宅床面積100㎡ × 2) × 3%
- = 約66,666円 × 200㎡ × 3% = 399,996円 → 約40万円
ステップ3:控除額を比較し、多い方を適用
A(4.5万円)とB(約40万円)を比べると、Bの方が大きいですね。よって控除額は約40万円となります。
ステップ4:土地の税額から控除額を引く
土地の税額(軽減後):30万円 – 約40万円 = -10万円
税額はマイナスにはならないので、この場合の土地の不動産取得税は0円となります!

すごい!土地の税金がゼロになりました!この軽減措置の効果は絶大ですね!
この土地の税額軽減は、納税者からの申告に基づいて適用されます。自動的に適用されるわけではないので、忘れずに手続きをすることが非常に重要です!
不動産取得税の免税点
不動産を取得した場合でも、その課税標準額が一定の金額に満たない場合は、不動産取得税は課税されません。これを「免税点」といいます。
【免税点となる課税標準額】
取得した不動産の種類 | 免税点(この額に満たない場合は非課税) |
---|---|
土地 | 10万円 |
家屋(建築により取得:新築・増改築) | 23万円 |
家屋(建築以外により取得:売買・贈与など) | 12万円 |
<注意>
- これは課税標準額(原則として固定資産税評価額)の基準です。実際の取引価格ではありません。
- 土地の場合、取得後1年以内に隣接する土地を取得した場合などは、それらを合わせて一つの土地の取得とみなして免税点を判定することがあります。
- 家屋の場合、取得後1年以内にその家屋と一体となる家屋を取得した場合なども同様です。
免税点の金額自体は小さいですが、試験ではこの金額を正確に覚えているかが問われることがあります。土地は10万、新築は23万、売買等は12万、としっかり暗記しましょう。
不動産取得税の申告と納税の手続き
不動産取得税は、不動産を取得した後に手続きが必要です。
- 申告: 不動産を取得した日から一定期間内(都道府県によって異なりますが、通常30日や60日など)に、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所などに申告書を提出する必要があります。軽減措置を受ける場合も、この申告が必要です。
- 納税通知書の受領: 申告内容や登記情報などに基づいて、都道府県が税額を計算し、納税通知書を送付してきます。(申告しなくても、登記情報などから通知書が送られてくることが多いですが、軽減措置が適用されていない場合があるので注意が必要です。)
- 納税: 納税通知書に記載された納期限までに、金融機関やコンビニエンスストア、クレジットカード(対応している場合)などで納税します。
軽減措置を受けるためには、原則として申告期限までに申告が必要です! 期限を過ぎてしまうと、軽減が受けられなくなる可能性があるので、不動産を取得したら早めに手続きを確認・実施しましょう。不動産会社や司法書士が手続きを代行してくれる場合もあります。
まとめ
今回は、不動産取得税について、基本的な仕組みから計算方法、そして非常に重要な軽減措置まで詳しく解説しました。少し複雑な部分もありましたが、ポイントは掴めましたでしょうか?
不動産取得税は一度きりの税金ですが、軽減措置を知っているのと知らないのとでは、納税額に大きな差が出ます。特に住宅とその敷地を取得する際には、適用できる軽減措置がないかしっかり確認し、忘れずに手続きを行うことが大切です。
最後に、この記事で学んだ重要ポイントをまとめます。
- 不動産取得税は、不動産(土地・家屋)を取得した時に、その不動産の所在する都道府県に納める税金(取得時1回のみ)。
- 相続や法人の合併、包括遺贈による取得は非課税(贈与や特定遺贈は課税)。
- 課税標準は、原則として固定資産税評価額(売買価格ではない)。
- 税率は原則4%だが、土地・住宅は特例で3%(令和9年3月31日まで予定)。
- 軽減措置(特例)が重要!
- 住宅(家屋): 床面積要件(50㎡~240㎡等)を満たせば、評価額から最大1,200万円控除(中古は築年数or新耐震基準要件あり)。
- 宅地評価土地: 課税標準が1/2になる。
- 住宅用土地の税額軽減: 計算された土地の税額から、最大「4.5万円」or「土地評価額(1/2)×住宅面積×2×3%」の多い方を控除(適用要件あり)。
- 免税点あり(土地10万円未満、新築家屋23万円未満、売買等家屋12万円未満)。
- 軽減措置を受けるには、原則として期限内の申告が必要。

宅建試験では、特に課税標準の考え方、非課税ケース、そして各種軽減措置の要件や控除額が頻出です。計算問題が出題されることもあるので、具体的な計算の流れも理解しておきましょう!