ポストに入っているチラシ、街で見かける看板、インターネットの物件情報…。魅力的なキャッチコピーや写真がいっぱいで、「わー、素敵な物件!」「ここ、すごく便利そう!」って、ワクワクしますよね! でも、ちょっと待って。「駅から徒歩5分って書いてあるけど、本当かな?」「この価格、本当にお得なの?」なんて、少し疑ってみることも大切かもしれません。
実は、不動産広告には、消費者を守るために宅建業法で厳しいルールが定められているんです。宅建業者さんは、ウソや大げさな表現で人を惑わせるような広告(誇大広告)を出してはいけませんし、まだ準備が整っていない物件の広告を勝手に出すこと(フライング広告)もできません。さらに、広告には「自分はこの取引でどういう立場ですよ」という取引態様をはっきり書かないといけない、というルールもあります。
これらのルールを知らないと、宅建業者を目指す皆さんはうっかり違反してしまうかもしれませんし、消費者としては不利な情報に気づかず契約してしまうリスクもあります。試験でも頻出の重要分野ですから、しっかり理解しておきたいですよね!
この記事では、そんな宅建業法の「広告規制」について、
- 誇大広告等の禁止(どんな広告がNG?)
- 広告開始時期の制限(いつから広告してOK?)
- 取引態様の明示義務(広告に書くべき立場は?)
という3つの大きな柱に沿って、具体例を交えながら、どこよりも分かりやすく解説していきます! これを読めば、不動産広告の「ここをチェックすべき!」というポイントが分かり、試験対策はもちろん、将来実務に就いたときや、自分自身が家を探すときにも役立つ知識が身につきますよ!

さあ、一緒に広告規制をマスターして、トラブルを未然に防ぐ知識と、試験で得点できる力を手に入れましょう!
この記事でわかること
- どんな広告が「誇大広告」として禁止されるのか?具体的なNG例
- 「おとり広告」「虚偽広告」も違反になること
- 未完成の物件は、どのタイミングから広告を出せるようになるのか?
- 広告を出すときに、必ず明示しなければならない「取引態様」とは?
- 不動産広告のルールを学ぶ重要性
【誇大広告等の禁止】ダメ!ウソ・大げさ・紛らわしい不動産広告の具体例と注意点
まず、広告規制の基本中の基本、「誇大広告等の禁止」についてです。これは、読んで字のごとく、「大げさな広告やウソの広告はダメですよ!」というルールです。
宅建業法では、宅建業者が広告を出すときに、以下の2つのことを禁止しています。
禁止される表示(宅建業法第32条)
- 著しく事実に相違する表示 → 全くのウソや、事実と大きく異なることを書くこと。
- 実際のものよりも著しく優良であり、又は著しく有利であると人を誤認させるような表示 → 事実と違うわけではないけど、ものすごく良い物件だとか、ものすごくお得だと勘違いさせるような書き方をすること。

簡単に言うと、「ウソをつくのはもちろんダメ!」「誤解を招くような大げさな表現もダメ!」ってことですね。
何についての「ウソ・大げさ」が禁止なの?
じゃあ、具体的に、何に関する情報について、これらの禁止される表示をしてはいけないのでしょうか? 宅建業法では、主に以下の6つの項目を挙げています。
<誇大広告等の対象となる主な事項>
- 物件の「所在、規模、形質」など
- 所在: どこにあるか (住所、地番、地図など)
- 規模: 広さや間取り (面積、部屋数、分譲地全体の広さや戸数も含む)
- 形質: 物件の状態や性質 (土地の地目、建物の構造・築年数、上下水道・ガスの供給状況、性能など)
- 物件の「現在・将来の利用制限、環境」など
- 利用制限: 法律上の制限 (都市計画法、建築基準法、農地法などによる制限) や私法上の権利 (借地権、地上権など) の有無や内容
- 環境: 周りの状況 (日当たり、静かさ、眺望、近くのスーパー・学校・病院、公園などの公共施設の整備状況など)
- 物件の「現在・将来の交通その他の利便」など
- 交通利便: 最寄り駅やバス停までの距離・所要時間、利用できる路線、将来の建設計画など
- 「代金・借賃等」の対価の額・その支払方法など
- 対価の額: 売買代金、賃料、権利金などの金額
- 支払方法: 現金一括、割賦(分割)払い、頭金、支払回数・期間など
- 「代金・交換差金」に関する金銭の貸借(ローン)のあっせん
- ローンのあっせんの有無、利用条件 (金利、返済期間、資格など)
- 保証(建物の瑕疵担保責任の履行に関する保証保険契約等)
- 建物の欠陥に対する保証保険などの内容
これらの項目について、ウソを書いたり、大げさに表現したりすることは許されません。
「著しく」ってどのくらい? 具体的なNG例
ここでポイントになるのが、「著しく」という言葉です。単にちょっとした間違いや、少し良く見せる表現がすべて即違反になるわけではありません。
- 著しく事実に相違する: 一般の購入者が、そのウソを知っていたら「絶対に買わなかった(借りなかった)だろう」と思われるような、重大なウソのこと。
- 例:
- 本当は市街化調整区域(原則、家を建てられない)なのに、「市街化区域」と表示する。
- 築20年の建物を「築5年」と表示する。
- 農地を「宅地」として販売広告を出す。
- 60㎡しかない部屋を「広々70㎡!」と表示する。
- 例:
- 著しく優良・有利と誤認させる: 不動産に詳しくない一般の購入者が、その表示を見て「実際よりもすごく良い物件だ!」「すごくお得だ!」と勘違いしてしまうような表示のこと。
- 例:
- 最寄り駅まで実際の道のりでは30分かかるのに、直線距離だけ測って「駅まで徒歩10分!」と表示する。(※不動産広告では、通常「徒歩1分=道路距離80m」で計算することがルール化されています)
- 「日当たり良好!」と書いてあるけど、実際は隣に高い建物が建つ予定があって、将来日当たりが悪くなることが分かっている。
- 相場より特別安いわけでもないのに「格安!」「掘り出し物!」と表示する。
- すべての部屋が南向きではないのに、「全室南向き!」と表示する。
- 例:
定期借地権・定期建物賃貸借の広告にも注意!
更新がない「定期借地権」や「定期建物賃貸借」について広告を出す場合も、注意が必要です。
- 通常の(更新がある)借地権や建物賃貸借だと誤解させるような表示
- 契約期間や賃料など、契約内容についてウソを書いたり、実際より著しく有利だと誤認させるような表示
これらも誇大広告として違反になります。
「おとり広告」「虚偽広告」も絶対ダメ!
誇大広告と似ていますが、特に悪質なのが「おとり広告」と「虚偽広告」です。
- おとり広告: 本当は売る気がない(売れない)のに、すごく条件の良い物件があるように見せかけて広告を出し、お客さんを集めること。問い合わせてみると「あ、その物件はちょうど今決まっちゃって…代わりにこちらの物件どうですか?」などと言われるパターン。
- 虚偽広告: そもそも存在しない物件を広告に出すこと。
これらは、お客さんを騙して呼び寄せるための悪質な手口であり、広告を掲載した時点で宅建業法違反となります。実際にお客さんからの問い合わせがなくてもアウトです!
広告の媒体は関係なし!
この誇大広告等の禁止ルールは、どんな媒体の広告にも適用されます。
- 新聞の折り込みチラシ
- 街頭で配るチラシ
- 新聞・雑誌の広告欄
- テレビ・ラジオCM
- インターネットのウェブサイト、SNS
- 物件現地の看板 などなど…

媒体が何であれ、ウソや大げさな広告は許されないってことですね! ラジオで口頭で紹介する場合でも、誇大広告になれば違反になるんです。
【広告開始時期の制限】フライング広告はNG!未完成物件の広告はいつからOK?
次に、広告を「いつから始めていいのか」というタイミングに関するルールです。特に、まだ完成していない物件についてのルールが重要です。
想像してみてください。まだ造成工事も始まっていない宅地や、基礎工事中の建物の広告を見て、「ここに素敵な家が建つんだ!買おう!」と契約したとします。でも、もしその後、工事に必要な許可が下りなかったり、計画が変更になったりしたら…? 最悪の場合、家が建たない、なんてことにもなりかねません。
そういった事態を防ぐために、宅建業法では、まだ工事が完了していない宅地や建物については、広告を開始できる時期に制限を設けています。
広告開始時期の制限(宅建業法第33条)
- 対象:
- 宅地の造成工事完了前の宅地
- 建物の建築工事完了前の建物
- 制限: これらの未完成物件については、その工事に関して必要とされる以下の処分があった後でなければ、売買その他の業務に関する広告をしてはならない。
- 開発許可 (都市計画法)
- 建築確認 (建築基準法)
- 宅地造成工事の許可 (宅地造成及び特定盛土等規制法 ※旧 宅地造成等規制法)
- 農地転用の許可 (農地法 第3条・第4条・第5条)
- その他、法令に基づく許可・認可など
- 趣旨: 許可等が下りる前に広告を出すと、計画変更や中止のリスクがあり、消費者に不測の損害を与える可能性があるため。
つまり、造成中や建築中の物件でも、工事に必要な許可や確認などがちゃんと下りていれば、工事完了前であっても広告を開始することはOKなんです。逆に言えば、これらの許可等がまだ下りていない段階では、たとえ工事が始まっていても広告を出すのはNG(フライング広告)ということです。
<OKな例>
- 造成工事中の宅地について、開発許可を受けた後に、その宅地の分譲広告を出す。
- 建築中のマンションについて、建築確認済証の交付を受けた後に、そのマンションの販売広告を出す。
<NGな例>
- 開発許可が必要な宅地造成なのに、開発許可を受ける前に広告を出す。
- マンション建築の建築確認申請中に、販売広告を出す。
<ポイント>国土利用計画法の届出等は含まれない!
注意点として、国土利用計画法に基づく「事後届出」や「事前届出」、規制区域内での「許可」などは、この広告開始時期の制限でいう「許可等」には含まれません。つまり、これらの手続きが終わっていなくても、開発許可や建築確認などが下りていれば広告は開始できます。
(国土利用計画法は、主に土地取引の価格や利用目的をチェックする法律なので、広告開始のタイミングとは直接関係しない、と覚えておきましょう)
【取引態様の明示義務】私は誰?広告には「売主・代理・媒介」の明記が必須!
最後のポイントは、「取引態様の明示義務」です。これは、広告を出す宅建業者が、その取引においてどういう立場で関わるのかを、はっきり示さなければならない、というルールです。
宅建業者が不動産取引に関わる形態(=取引態様(とりひきたいよう))には、主に以下の3つがあります。
- 売主: 宅建業者が自ら物件の所有者として売る場合。
- 代理: 売主(または貸主)から依頼を受けて、その代理人として契約などの行為を行う場合。代理人の行為は、原則として本人(売主・貸主)の行為とみなされます。
- 媒介(仲介): 売主(貸主)と買主(借主)の間に入って、契約が成立するように手助け(あっせん)する場合。契約の当事者にはなりません。
なぜ、広告にこの取引態様を明示する必要があるのでしょうか?
それは、買主(借主)にとって、誰と交渉し、誰と契約するのか、そして仲介手数料が必要になるのかどうかが、取引態様によって大きく異なるからです。
- 売主が相手なら、直接その業者と契約交渉し、仲介手数料はかかりません。
- 代理が相手なら、その業者が本人に代わって契約行為を行い、仲介手数料がかかる場合があります。(誰から依頼を受けているかによります)
- 媒介(仲介)が相手なら、その業者はあくまで仲介役であり、契約は売主(貸主)と結びます。そして、通常、仲介手数料が必要になります。
このように、取引態様は取引の進め方や費用に関わる重要な情報なので、広告の段階で明確にすることが義務付けられているのです。
取引態様の明示義務(宅建業法第34条)
- 義務: 宅建業者は、宅地建物の売買、交換、貸借に関する広告をするときは、自己の取引態様の別(売主、代理、媒介)を明示しなければならない。
- 趣旨: 取引の相手方や仲介手数料の有無などを消費者が事前に把握できるようにするため。
広告を見るときは、「この広告を出している業者は、売主なのかな? 代理? それとも媒介(仲介)?」という点を必ずチェックするようにしましょう! 小さく書かれていることが多いですが、非常に重要な情報ですよ。
(ちなみに、広告だけでなく、お客さんから売買や賃貸の注文を受けたときにも、遅滞なく取引態様を明示する義務があります。)
まとめ
お疲れ様でした! 今回は、宅建業法の「広告規制」について、3つの大きな柱を見てきました。
不動産広告は、私たち消費者にとっては物件を知るための重要な情報源ですが、同時に、誤った情報や誤解を招く表現が含まれている可能性もゼロではありません。宅建業法が定める広告規制は、そうしたリスクから私たちを守り、公正な取引を確保するための大切なルールです。
最後に、今日のポイントを復習しましょう!
- 誇大広告等の禁止:
- 「著しく事実に相違する表示」「著しく優良・有利と誤認させる表示」はNG。
- 対象は、物件の内容(所在・規模・形質・環境・利用制限・交通利便)や取引条件(価格・支払方法・ローンあっせん等)。
- おとり広告・虚偽広告も厳禁。
- 広告媒体は問わない。
- 広告開始時期の制限:
- 未完成物件(造成前宅地・建築前建物)は、開発許可や建築確認等の処分後でなければ広告できない。
- 国土利用計画法の届出等は含まない。
- 取引態様の明示:
- 広告には、その業者の立場(売主・代理・媒介)を必ず明示しなければならない。
これらのルールをしっかり理解しておくことは、宅建試験合格のためだけでなく、皆さんが将来、不動産取引に関わる際に必ず役立ちます。

これで広告規制もバッチリですね! 試験で問われやすいポイントを押さえて、確実に得点できるようにしておきましょう!