権利関係、特に民法の契約に関する部分って、「債権」とか「債務」とか「債務不履行」とか、似たような言葉が多くて、頭がこんがらがっちゃう…なんてこと、ありませんか?「履行遅滞」と「履行不能」の違いってなんだっけ?「同時履行の抗弁権」?「危険負担」?って、もう大変!って思ってる方もいるかもしれませんね。
これらの用語は、契約がどのように行われて、もし約束が守られなかった場合にどうなるのか、というルールを定めた、とっても大切な基礎知識なんです。宅建試験でも頻出の分野なので、ここをしっかり押さえておくと、権利関係の得点力がグッとアップしますよ!
この記事では、債権・債務の基本から、債務不履行の種類(履行遅滞・履行不能・不完全履行)、そしてそれに関連する同時履行の抗弁権や危険負担まで、初心者の方にも分かりやすいように、具体例をたくさん使いながら解説していきます!この記事を読めば、契約に関する基本的なルールがスッキリ整理できて、「なるほど、そういうことだったのか!」って、きっと自信が持てるようになりますよ!

わかります!私も最初はちんぷんかんぷんでした…。でも大丈夫!一つ一つ丁寧に見ていけば、ちゃんと理解できる内容なんですよ。
この記事でわかること
- 債権と債務の基本的な意味と、物権との違い
- 債務不履行とは何か、どんな種類があるのか
- 履行遅滞、履行不能、不完全履行の具体的な内容と効果
- 同時履行の抗弁権や危険負担がどんな場面で使われるルールなのか
- 宅建試験で重要な契約ルールのポイント
債権と債務ってなに?物権との違いもスッキリ解説!
まず、すべての基本となる「債権(さいけん)」と「債務(さいむ)」について見ていきましょう!これがわからないと、この先の契約の話が理解しにくくなっちゃうので、しっかり押さえてくださいね。
債権と債務の基本のキ – 具体例でイメージをつかもう!
すっごく簡単に言うと、
- 債権:特定の人(債務者)に対して、「~して!」と何かをしてもらうことを要求できる権利のこと。
- 債務:特定の人(債権者)に対して、「~しなければならない」という義務のこと。
なんです。
例えば、AさんがBさんから土地を買う契約(売買契約)をした場面を考えてみましょう。
- 買主Aさん:
- 土地を引き渡してもらう権利 (債権)
- 代金を支払う義務 (債務)
- 売主Bさん:
- 代金を受け取る権利 (債権)
- 土地を引き渡す義務 (債務)
売買契約のような多くの契約では、契約した両方の当事者が、それぞれ債権者であり、同時に債務者でもあるんですね。Aさんは土地に関しては債権者だけど、代金に関しては債務者。Bさんはその逆です。
「権利=債権」「義務=債務」と考えると分かりやすいかも!この関係性は、これから学ぶ契約ルールの土台になるので、絶対に覚えておきましょう!
債権は「人に対する権利」、物権は「物に対する権利」
ここで、「債権」とよく比較される「物権(ぶっけん)」という権利についても触れておきますね。この違いを理解しておくと、権利関係の理解が深まりますよ。
債権の特徴 – 特定の人にしか主張できない
債権は、契約を結んだ相手など、特定の「人」に対してのみ主張できる権利です。
例えば、
- 土地を貸している人が、借りている人に「家賃払って!」と要求する権利(賃料請求権)
- お金を貸した人が、借りた人に「お金返して!」と要求する権利(貸金返還請求権)
- 物を売った人が、買った人に「代金払って!」と要求する権利(代金請求権)
これらは全部「債権」です。
もし、AさんがBさんに塀を作ってもらう請負契約を結んだ場合、BさんはAさんに対して報酬を請求する権利(報酬請求権という債権)を持ちますが、この権利はあくまで契約相手のAさんにしか主張できません。契約に関係ない第三者Cさんに「お金払って!」とは言えないんですね。

なるほど、債権は相手を選ぶんですね!
物権の特徴 – 誰にでも主張できる強い権利
一方、物権は、特定の「物」を直接的・排他的に支配する権利のことです。「排他的」っていうのは、他の人を排除して、自分だけがその物を支配できるって意味です。
物権の代表例は「所有権」です。自分が持っているスマホや、住んでいる家の所有権は、契約相手とか関係なく、世の中の誰に対しても「これは私のものだ!」と主張できますよね。これが物権の大きな特徴です。
他にも、物権には以下のような種類があります。
- 用益物権:他人の土地などを一定の目的で利用する権利(地上権、地役権など)
- 担保物権:お金を返してもらえない場合に、担保にとった物から優先的に返済を受ける権利(抵当権、質権、留置権など)
債権は「人」に対する権利、物権は「物」に対する権利で、誰にでも主張できる!この違い、しっかり覚えておきましょう!
ちょっと特別?借地権は債権だけど対抗力がある!
ここで、宅建試験でも重要な「借地権(しゃくちけん)」について少し補足です。
建物を建てる目的で土地を借りる権利(借地権)の多くは、土地の賃貸借契約に基づく権利なので、基本的には「債権」に分類されます。
「あれ?債権ってことは、契約した相手(地主さん)にしか主張できないの?」って思いますよね。
でも、借地権には特別なルールがあって、借りた土地の上に、借主さん名義で登記された建物を所有していれば、たとえ土地の持ち主(地主さん)が変わったとしても、新しい所有者に対して「私はこの土地を借りる権利があります!」と主張(対抗)できるんです。
借地借家法という法律で、土地を借りている人を保護するために、債権である借地権に物権のような強い効力(対抗力)を与えているんですね。債権だけど、ちょっと物権っぽい性格も持っている、と覚えておくと良いですよ!
約束違反はダメ!債務不履行の基本ルールと3つのパターン
さて、債権・債務の基本がわかったところで、次は「債務不履行(さいむふりこう)」についてです。これは、契約で約束した義務(債務)が、ちゃんと果たされない場合のことですね。
債務不履行とは? – 契約の約束を守らないこと
債務不履行とは、すごくシンプルに言うと、「契約で決めた約束(債務)を守らないこと」です。
さっきの土地売買の例で考えてみましょう。
- 買主Aさん: 代金を支払う義務 (債務)
- 売主Bさん: 土地を引き渡す義務 (債務)
この場合、
- 買主Aさんが、約束の期日までに代金を支払わない
- 売主Bさんが、約束の期日までに土地を引き渡さない
といった状況が「債務不履行」にあたります。

約束したことをやらない、ってことですね。シンプル!
そして、この債務不履行には、大きく分けて3つの種類があります。
- 履行遅滞(りこうちたい):やるべきことを、期限までにやらないこと。
- 履行不能(りこうふのう):やるべきことが、できなくなってしまったこと。
- 不完全履行(ふかんぜんりこう):一応やったけど、内容が不十分・不完全なこと。
この3つのパターンについては、後で詳しく説明しますね!
債務不履行になるとどうなる?債権者ができること
もし相手が債務不履行を起こした場合、約束を守ってもらえなかった側(債権者)は、泣き寝入りするしかないのでしょうか?そんなことはありません!
債務不履行があった場合、原則として債権者は以下の対抗手段をとることができます。
- 損害賠償請求:約束が守られなかったことで発生した損害の賠償を求めること。
- 強制執行(きょうせいしっこう):裁判所に申し立てて、相手の財産を差し押さえるなどして、強制的に権利を実現すること。
- 契約解除:契約そのものをなかったことにして、元の状態に戻すこと。
債務不履行があると、損害賠償、強制執行、契約解除ができる!これが原則です。
債務不履行が成立するための条件って?
ただし、単に「約束が守られなかった」という事実だけでは、必ずしも債務不履行として上記の対抗手段がとれるわけではありません。債務不履行が成立して、債権者が相手の責任を追及できるためには、主に以下の条件が必要です。
債務者のせいであること(帰責事由)
約束が守られなかった原因が、債務者(約束を守るべき人)の故意(わざと)や過失(うっかりミス)、またはそれに準ずるような理由(信義則上、同視できるような事由)にあることが必要です。これを「帰責事由(きせきじゆう)」と言います。
例えば、売主Bさんが自分の不注意(タバコの不始末など)で売る予定だった家を燃やしてしまい、引き渡せなくなった場合は、Bさんに帰責事由があるので債務不履行(履行不能)になります。
民法改正で、帰責事由の考え方が少し変わりました。「債務者の責めに帰することができない事由」(=債務者のせいでない理由)による場合は、損害賠償請求はできない、というルールになっています。契約解除は、帰責事由がなくてもできる場合があります。
約束を破るのが違法であること(正当な理由がないこと)
債務者が約束を履行しないことについて、正当な理由がないことも必要です。
もし、約束を守らないことに正当な理由があれば、それは債務不履行にはなりません。
例えば、さっきの土地売買で、買主Aさんが代金を支払おうとしない場合でも、もし売主Bさんの方が土地を引き渡す準備を全くしていないなら、Aさんは「あなたが土地を引き渡すまで、私も代金は払いませんよ!」と主張できます。これは「同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)」という正当な理由なので、この場合Aさんが代金を払わなくても債務不履行にはなりません。
債務不履行になるのは、「債務者のせい」で、かつ「正当な理由なく」約束を破った場合なんですね!
【種類別】履行遅滞・履行不能・不完全履行を詳しく見てみよう!
それでは、債務不履行の3つのパターン、「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」について、もう少し詳しく見ていきましょう!
履行遅滞 – 期限に間に合わない!いつから遅滞になる?
履行遅滞の定義と具体例
履行遅滞とは、履行期(約束の期限)が過ぎているのに、履行が可能であるにもかかわらず、債務者の帰責事由によって履行しないことです。簡単に言うと「やるべきことを、自分の都合で期限までにやらない」ってことですね。
- 例:アパートの家賃を、支払期限の月末までに、うっかり払い忘れた。
- 例:商品を10月20日までに届ける約束だったのに、発送が遅れて間に合わなかった。
いつから遅延?履行遅滞の起算点まとめ
履行遅滞で特に重要なのが、「いつから履行遅滞になるのか?」という起算点です。これが決まらないと、いつから遅延損害金が発生するのかなどが決まりません。約束の仕方によって、起算点は変わってきます。
<履行遅滞の起算点の比較表>
約束の種類 | 履行遅滞になる時期 | 具体例 |
確定期限のある債務 | その期限が到来した時 | 「10月20日までに支払う」→10月21日になったら遅滞 |
不確定期限のある債務 | 債務者がその期限の到来を知った時、または、期限到来後に債権者から請求を受けた時 | 「父が死亡したら支払う」→父が死亡し、かつ債務者がその事実を知った時から遅滞 |
期限の定めない債務 | 債権者が履行を請求した時 | 「お金を返す日を決めていない」→貸主が「返して」と請求した時から遅滞 |
(参考)不法行為に基づく損害賠償債務 | 不法行為があった時(損害が発生した時) | 交通事故を起こした→事故の瞬間から賠償金の支払いは遅滞状態になる(請求不要) |

約束の仕方で、遅滞になるタイミングが違うんですね!特に不確定期限と期限の定めなしは間違えやすいかも。
(補足)
- 停止条件付きの債務:条件が成就した後に、債権者から請求を受けた時から遅滞になります。
- 返還時期の定めのない金銭消費貸借:貸主が「返して」と催告し、相当な期間が経過した時から遅滞になります。(期限の定めない債務とは少し違うので注意)
履行不能 – 約束したことができなくなっちゃった!
履行不能の定義と具体例
履行不能とは、契約が成立した後で、債務者の帰責事由によって、その債務の履行(約束を果たすこと)が物理的または社会通念上できなくなってしまうことです。
- 例:売主が、売る約束をしていた特定の絵画を、自分の不注意で燃やしてしまった。
- 例:売主が、引き渡す約束だった建物を、自分のタバコの不始末で火事にしてしまい、滅失させた。
<建物の売買契約後に建物が焼失した場合>
- 買主Aさんと売主Bさんが建物の売買契約を締結。
- 引き渡し前に、売主Bさんの過失(例:タバコの不始末)で建物が全焼。
- → 売主Bさんは建物を引き渡す義務(債務)を履行できなくなる = 履行不能
履行不能になったらどうする?契約解除と損害賠償
履行不能になってしまった場合、債権者(上の例だと買主Aさん)はどうすればいいのでしょうか?
もう建物を引き渡してもらうことはできないので、債権者は、催告(「早く履行してください」と伝えること)をしなくても、直ちに契約を解除することができます。
さらに、履行不能になったことで損害(例えば、他に家を探すための費用など)が発生した場合は、契約の解除とあわせて損害賠償請求もできます。(ただし、損害賠償請求には債務者の帰責事由が必要です)
【注意】天災など債務者のせいでない場合は「危険負担」
もし、建物の滅失の原因が、債務者(売主Bさん)のせいではない場合、例えば地震や落雷、隣家からのもらい火など(不可抗力)の場合は、履行不能(債務不履行)の問題ではなく、「危険負担(きけんふたん)」の問題として扱われます。危険負担については後で説明しますね!
債務者のせいで履行できなくなった → 履行不能(債務不履行)
誰のせいでもなく履行できなくなった → 危険負担
この区別はとっても大事です!
不完全履行 – やったけど、なんか足りない!
不完全履行の定義と具体例
不完全履行とは、一応、履行(約束を果たすこと)はされたんだけど、その内容が不完全・不十分であることを言います。
- 例:リンゴ100個を届ける契約で、50個しか届けなかった。(数量不足)
- 例:納品された機械が、ちゃんと動かない。(品質不良)
- 例:土地付き建物の売買で、土地の登記は移転したけど、建物の登記はしてくれなかった。
不完全履行には、後から完全な履行をすることが可能な場合(追完可能な場合:例 リンゴの不足分を後で届ける)と、それが不可能な場合(追完不可能な場合:例 配達が遅れたことで損害が発生したが、時間を巻き戻すことはできない)があります。
一部他人物売買と不完全履行の関係
不完全履行は、契約不適合責任(昔でいう瑕疵担保責任)と関連して問題になることが多いです。
例えば、「一部他人物売買」のケース。
売主Aさんが、自分の土地(甲土地)と、隣のCさんの土地(乙土地)をまとめて、買主Bさんに売る契約をしたとします。Aさんは後でCさんから乙土地を買い取るつもりでした。
<一部他人物売買>
- 売主A ←→ 買主B (甲土地+乙土地の売買契約)
- 乙土地の所有者はC
その後、Aさんは自分の甲土地はBさんに引き渡せましたが、Cさんから乙土地を買い取ることができず、Bさんに引き渡せませんでした。
これは、売買契約の内容の一部(乙土地の引渡し)が履行されていないので、不完全履行(債務不履行)にあたります。
この場合、買主Bさんは、契約不適合責任のルールに基づいて、売主Aさんに対して、
- 代金の減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除
などを行うことができます。
同時履行の抗弁権 – 「そっちがやるまでこっちもやらない!」と主張できる権利
次は、「同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)」です。なんだか難しそうな名前ですが、考え方はとっても公平で、納得できるルールですよ!
売買契約みたいな「双務契約」が前提
まず、この同時履行の抗弁権が使えるのは、「双務契約(そうむけいやく)」が前提になります。
双務契約っていうのは、契約の当事者お互いが、対価的な意味を持つ債務を負っている契約のことです。
一番わかりやすいのが、これまで何度も例に出している売買契約ですね。
<債権と債務の関係を表すケース>
- 買主Aさん:代金支払債務 ⇔ 売主Bさん:土地引渡債務
このように、「土地を引き渡すから、代金を支払う」「代金を支払うから、土地を引き渡す」というように、お互いの債務が交換(ギブアンドテイク)の関係になっているのが双務契約です。賃貸借契約や請負契約なども双務契約にあたります。
同時履行の抗弁権とは? – 公平性を保つためのルール
同時履行の抗弁権とは、このような双務契約において、相手方が自分の債務を履行(または履行の提供)をするまでは、自分自身の債務の履行を拒否できる権利のことです。
言葉を分解すると、
- 同時履行:お互いの債務は同時に実行しましょうね
- 抗弁権:相手の要求に対して「ノー!」と反論・拒否できる権利
つまり、「あなたがやってくれるまで、私もやりませんよ!」と主張できる権利なんですね。
さっきの土地売買の例で、買主Aさんが代金を用意できないのに、売主Bさんに対して「先に土地を引き渡してくれ!」と要求してきたとします。このとき、売主Bさんは「いやいや、代金を支払ってくれるまで、土地は引き渡しませんよ!」と拒否できます。これが同時履行の抗弁権です。

たしかに、自分だけ先に義務を果たすのは不安だし、不公平ですもんね。
この権利があることで、双務契約における当事者間の公平性が保たれているわけです。
同時履行の抗弁権を主張できると、履行遅滞にならない!
同時履行の抗弁権を持っている人が、その権利を主張して自分の債務の履行を拒んでいる間は、たとえ履行期が過ぎていても、履行遅滞(債務不履行)にはなりません。
なぜなら、履行しないことに「正当な理由」があるからです。
同時履行の抗弁権を主張できる = 履行しなくても債務不履行(履行遅滞)にならない!
これはセットで覚えておきましょう!
危険負担 – 誰のせいでもなく契約がダメになったらどうなる?
最後に「危険負担(きけんふたん)」について見ていきましょう。これは、契約が成立した後、当事者どちらのせいでもない理由(天災など)で、一方の債務が履行できなくなってしまった場合に、その損失(リスク)をどちらが負担するのか、という問題です。
危険負担ってどんなときに使うの?
危険負担が問題になるのは、双務契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由(=誰のせいでもない理由)によって、一方の債務が履行不能になった場合です。
- 例:売買契約を結んだ建物が、引き渡し前に地震で倒壊してしまった。
- 例:売買契約を結んだ絵画が、引き渡し前に落雷による火事で焼失してしまった。
<天災で建物が滅失したケース>
- 買主Aさんと売主Bさんが建物の売買契約を締結。
- 引き渡し前に、地震(双方の責任ではない事由)で建物が倒壊。
- → 売主Bさんは建物を引き渡す義務(債務)を履行できなくなる。この場合に危険負担のルールが適用される。
さっき説明した「履行不能」は、”債務者のせい”で履行できなくなった場合でしたが、危険負担は”誰のせいでもなく”履行できなくなった場合、という点が大きな違いです。
【改正民法】危険負担のルール – 買主は代金の支払いを拒める!
民法が改正されて、危険負担のルールは以前よりシンプルになりました。
上記の例のように、売主Bさんのせいではなく建物が滅失して引き渡せなくなった場合、買主Aさんはどうなるのでしょうか?
この場合、買主Aさんは、売主Bさんに対して、代金の支払いを拒絶することができます。つまり、「建物をもらえないんだから、代金も払いませんよ!」と主張できるわけです。
これは、建物の引渡し債務と代金の支払債務が対価関係(同時履行の関係)にあることから考えると、自然な結論ですよね。

改正前のルールはちょっと複雑だったんですけど、今はシンプルに「もらえないなら払わない」でOKになったんですね!
さらに、買主Aさんは、代金の支払いを拒絶できるだけでなく、契約を解除することもできます。この場合、売主Bさんの帰責事由は必要ありません。
契約前にダメになってた場合は? – 債務不履行の問題になる!
ここで一つ注意点です。
もし、売買契約を結ぶ“前”に、すでに建物が地震などで滅失していた場合はどうなるでしょうか?
この場合は、危険負担の問題ではなく、原始的不能(げんしてきふのう)といって、契約の内容を実現することが最初から不可能だった、ということになります。
判例や学説では、このような場合でも契約自体は有効に成立すると考え、売主がその不能を知っていたり、知ることができた場合には、債務不履行(履行不能)の問題として、買主は損害賠償請求などができる可能性がある、とされています。
契約”後“に誰のせいでもなく履行不能 → 危険負担(代金支払拒絶、解除)
契約”前”にすでに履行不能だった → 原始的不能(契約は有効、状況により債務不履行として損害賠償等の可能性)
この区別も頭に入れておきましょう!
まとめ
今回は、宅建の民法で超重要な「債権・債務」から始まって、「債務不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行)」、そして「同時履行の抗弁権」「危険負担」という、契約に関する一連の基本ルールを解説しました!
契約は、私たちの社会を成り立たせるための基本的な約束事です。その約束が守られなかったときにどうなるのか、誰のせいでもないトラブルが起きたときにどう解決するのか、といったルールを定めているのが、今日学んだ内容なんですね。
この記事のポイント
- 債権は特定の人への権利、債務は特定の人への義務。物権は物に対する権利で誰にでも主張可能。
- 債務不履行は約束違反のこと。履行遅滞(遅れる)、履行不能(できなくなる)、不完全履行(不十分)の3種類。原則、損害賠償・強制執行・契約解除が可能。
- 債務不履行の成立には帰責事由と違法性(正当理由がないこと)が必要。
- 履行遅滞の起算点は約束の仕方で変わる点に注意!
- 履行不能は債務者のせい。誰のせいでもない場合は危険負担。
- 同時履行の抗弁権は双務契約で公平を保つ権利。主張すれば履行遅滞にならない。
- 危険負担(改正民法)では、買主は代金支払いを拒絶でき、契約解除も可能。
これらの知識は、単に暗記するだけでなく、「なぜこのようなルールになっているのか?(公平性、債権者保護など)」「それぞれの制度がどう繋がっているのか?」を考えながら学習すると、より深く理解できて、忘れにくくなりますよ!

宅建試験合格に向けて、権利関係、特に契約のルールは避けて通れません。一つ一つ着実にマスターしていきましょう!