「低層住居専用地域って、高さ10mか12mまでしか建てられないの?」「斜線制限って、道路とか北側とか隣地とか、いろいろあって混乱する!」「日影規制って、具体的にどういうルールなの?」…建物の高さに関する規制は種類が多く、どの地域でどの規制がかかるのか、覚えるのが大変ですよね。特に斜線制限や日影規制は、図形的なイメージも必要で、苦手意識を持っている方も多いかもしれません。
これらの高さに関するルールは、単に建物の高さを制限するだけでなく、周辺の日照や通風を確保したり、街並みの圧迫感をなくしたり、良好な住環境や都市環境を守るために非常に重要な役割を果たしています。宅建試験でも、それぞれの制限の適用範囲や基本的な考え方が頻繁に問われます。
この記事では、まず絶対的な高さの上限が決まっている「絶対的高さ制限」を確認し、次にややこしい各種斜線制限と日影規制について、どの用途地域でどの制限が適用されるのかを比較表で整理しながら、それぞれの目的と基本的な考え方を分かりやすく解説していきます。

この記事を読めば、複雑な高さ制限のルールがスッキリ理解でき、自信を持って問題に取り組めるようになるはずです!
<この記事でわかること>
- 絶対的高さ制限の内容と適用される用途地域
- 道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影規制の基本的な考え方と目的
- 用途地域ごとに、どの高さ制限・日影規制が適用されるかの比較
- 各制限のポイントと注意点
低層住宅地のスカイラインを守る!絶対的高さ制限のルール
まずは、特定の地域にだけ適用される、非常に厳しい高さ制限「絶対的高さ制限」から見ていきましょう。
【絶対高さ制限とは?】10mまたは12mの厳しい高さルール
絶対的高さ制限とは、その名の通り、建築物の高さに絶対的な上限を設ける規制です。
具体的には、都市計画で定められた建築物の高さの限度(原則として10mまたは12mのどちらか)を超えて建築してはならない、というルールです(建築基準法 第55条)。
10mにするか12mにするかは、その地域に関する都市計画で具体的に定められます。
【どこで適用される?】対象は3つの住居系用途地域だけ!
この絶対的高さ制限が適用されるのは、以下の3つの用途地域のみです!
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
これらの地域は、主に一戸建てなどの低層住宅の良好な住環境を守ることや、田園住居地域では農業との調和を図ることを目的としています。そのため、高い建物が建つのを防ぎ、日照や通風を確保し、落ち着いた街並みを維持するために、このような厳しい高さ制限が設けられているのです。
これら3地域以外の用途地域には、絶対的高さ制限は適用されません!この適用範囲をしっかり覚えましょう。

低層住宅を守るための特別なルールなんですね。だから「絶対的」なんです。
斜線制限(道路・隣地・北側)と日影規制の適用範囲とポイント
次に、建物の形を斜めにカットするような形で高さを制限する「斜線制限」と、建物が落とす影の時間を制限する「日影規制」について見ていきましょう。これらの規制は、適用される用途地域がそれぞれ異なるため、その違いを把握することが重要です。
【まずは全体像!】4つの規制の適用範囲を用途地域別に一発チェック!
どの用途地域でどの規制が適用されるのか、まずは一覧表で確認しましょう。(用途地域は前回記事と同様の9つのグループ分けで示します。×は適用がないことを意味します。)
<高さ制限・日影規制 適用範囲比較表(用途地域別)>
No. | 用途地域グループ | 北側斜線制限 | 道路斜線制限 | 日影規制 (条例指定による) | 隣地斜線制限 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 低層住居専用地域・田園住居地域 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 中高層住居専用地域 | 〇 (※日影規制対象は適用除外あり) | 〇 | 〇 | 〇 |
3 | 住居地域 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
4 | 準住居地域 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
5 | 近隣商業地域 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
6 | 商業地域 | × | 〇 | × | 〇 |
7 | 準工業地域 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
8 | 工業地域 | × | 〇 | × | 〇 |
9 | 工業専用地域 | × | 〇 | × | 〇 |
※日影規制は、対象となる用途地域内であっても、地方公共団体が条例で区域を指定した場合に適用されます。
用途地域ごとのポイント(低層は隣地斜線なし、商業・工業は日影規制なし等)
この表からわかる重要なポイントをまとめます。
- 道路斜線制限は、すべての用途地域で適用されます!
- 北側斜線制限が適用されるのは、低層住居専用地域、田園住居地域、中高層住居専用地域の住居系の「専用」地域のみです。
- 隣地斜線制限は、低層住居専用地域、田園住居地域では適用がありません!
- 日影規制は、商業地域、工業地域、工業専用地域では指定されません!
- 中高層住居専用地域では、日影規制の対象区域内で一定の高さ(通常10m)を超える建築物については、北側斜線制限の適用が除外される場合があります(日影規制の方が優先されるイメージ)。

こうして見ると、地域ごとに適用されるルールが全然違いますね!特に適用されない「×」の部分を覚えるのが大事そう!
では、それぞれの制限がどんなものか、もう少し詳しく見ていきましょう。
【北側の日当たりを守る】北側斜線制限とは?
北側斜線制限は、主に建物の北側にある隣地の日照を確保するための高さ制限です。
自分の敷地の北側隣地境界線上の一定の高さ(低層住居専用地域等では5m、中高層住居専用地域では10m)から、一定の勾配(1:1.25)で敷地の上空に向かって斜線を引きます。建築物はこの斜線の内側に収まるように建てなければなりません。
これにより、建物の北側部分の高さが抑えられ、北側の隣地に最低限の日当たりが確保されるようになっています。特に、日当たりの重要性が高い住居系の「専用」地域(グループ1、2)に適用されるのが特徴です。
【道路への圧迫感をなくす】道路斜線制限とは?
道路斜線制限は、道路の採光や通風を確保し、道路に面した建物の圧迫感を軽減するための高さ制限です。
敷地が接している前面道路の反対側の境界線から、敷地の上空に向かって一定の勾配(用途地域や距離によって異なる)で斜線を引きます。建築物はこの斜線の内側に収めなければなりません。
道路に近い部分ほど高さが抑えられ、道路から離れるほど高く建てられるようになります。この制限は、すべての用途地域に適用される基本的な高さ制限ルールです。
【お隣への配慮】隣地斜線制限とは?
隣地斜線制限は、隣地の採光や通風を確保し、建物による圧迫感を和らげるための高さ制限です。
隣地境界線上の一定の高さ(住居系地域等では20m、それ以外では31m)の位置から、敷地の上空に向かって一定の勾配(用途地域によって異なる)で斜線を引きます。建築物のうち、高さが20mまたは31mを超える部分は、この斜線の内側に収めなければなりません。

<ポイント>この制限は、ある程度の高さ(20mまたは31m)を超える建物に適用されるもので、比較的高い建物が建てられる地域(グループ2~9)が対象です。低層住居専用地域・田園住居地域(グループ1)には適用がありません。
【冬の日照を守る】日影規制(日影による中高層建築物の高さの制限)とは?
日影規制(正式名称:日影による中高層建築物の高さの制限)は、一定の高さ以上の建物が、周囲の敷地に落とす「日影」の時間を一定限度内に抑えることで、間接的に建物の高さを制限し、周辺の日照環境を守るためのルールです。
冬至日(一年で最も影が長くなる日)を基準に、敷地境界線から一定の範囲(5m~10mの範囲と、10mを超える範囲)において、建物が日影となる時間を、地域ごとに定められた時間(例えば3時間、4時間、5時間など)以内に収めなければなりません。
日影規制は、どこでも適用されるわけではありません。まず、用途地域としては、商業地域、工業地域、工業専用地域では対象外です。それ以外の用途地域で、かつ、地方公共団体が条例で区域を指定した場合にのみ適用されます。また、対象となる建物の高さも条例で定められます(例:軒高7m超、階数3以上など)。

日影規制は、特に日照が重要な住居系の地域などで、条例によって適用されることが多いんですね。
各斜線制限や日影規制の具体的な勾配や数値、計算方法などは非常に複雑で、宅建試験で詳細な計算まで問われることは稀です。まずは、それぞれの制限の目的、適用される用途地域、基本的な考え方をしっかり押さえることが重要です。
まとめ
今回は、建築基準法における「高さ制限」と「日影規制」について解説しました。絶対的高さ制限という直接的な高さの上限から、斜線制限や日影規制といった、周辺環境への配慮からくる間接的な高さ制限まで、様々なルールがありましたね。
これらの規制は、一見すると建物を建てる上での制約に感じられますが、それぞれの建物が周囲と調和し、安全で快適な都市環境を維持していくためには欠かせないものです。どの地域でどの規制が適用されるのか、その違いをしっかり理解しておくことが、宅建試験攻略の鍵となります。
最後に、今回学んだ重要ポイントを整理しましょう。
- 絶対的高さ制限:第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域のみ適用。高さの上限は10mまたは12m。
- 道路斜線制限:全ての用途地域で適用。道路の採光・通風、圧迫感軽減が目的。
- 隣地斜線制限:低層住居専用・田園住居地域以外で適用。隣地の日照・通風、圧迫感軽減が目的(高さ20m/31m超の部分)。
- 北側斜線制限:低層住居専用・田園住居地域、中高層住居専用地域で適用。北側隣地の日照確保が目的。(※日影規制対象区域等では適用除外あり)
- 日影規制:商業・工業・工業専用地域以外で、地方公共団体の条例で指定された区域に適用。周辺の日照確保のため、日影時間を制限。
- 適用範囲の比較が重要:どの地域でどの制限が適用されるか・されないかを正確に覚えること。

高さ制限・日影規制は、用途地域や他の集団規定と関連付けて学習すると、より理解が深まります。複雑な部分もありますが、基本を押さえて過去問演習を繰り返せば、必ず得点できるようになります。頑張ってくださいね!