不動産を売ったり買ったり、貸したり借りたりする時、不動産会社(宅建業者)にお願いすると「仲介手数料」がかかりますよね。「あれって、一体いくらぐらいが相場なの?」「上限とかって決まってるのかな?」「もしかして、ちょっと高すぎない…?」なんて、気になったことはありませんか?
実は、宅建業者が受け取ることができる報酬(仲介手数料)には、法律でちゃんと上限額が定められているんです! 知らないうちに上限を超える手数料を請求されていた…なんてことにならないためにも、このルールをしっかり理解しておくことは、とっても大切!
今回は、宅建試験でも必須の知識である「宅建業者の報酬」について、その基本から、売買・賃貸、媒介・代理といったケースごとの計算方法、さらには最近話題の「低廉な空家等の特例」まで、まるっと分かりやすく解説していきますよ!

仲介手数料って、普段あまり意識しないけど、実は細かいルールがいっぱいあるんです! 今日はその仕組みを徹底解剖しちゃいましょう!
この記事でわかること
- 宅建業者の報酬(仲介手数料)の基本的な考え方(成功報酬、上限設定)
- 売買・交換の場合の報酬上限額の計算方法(速算式)
- 賃貸借の場合の報酬上限額のルール(居住用・非居住用、権利金)
- 媒介(仲介)と代理で報酬の上限はどう変わる?
- 低廉な空家等(800万円以下)の売買・交換における報酬の特例について
宅建業者の報酬(仲介手数料)キホンのキ!
そもそも報酬って何?成功報酬が原則!
まず、基本から確認しましょう! 宅建業者が受け取る「報酬」とは、不動産の売買、交換、または賃貸借の媒介(仲介)や代理を行ったことに対する対価、いわゆる「仲介手数料」や「代理手数料」のことです。
この報酬には、以下の大事な原則があります。
- 成功報酬であること:
- 報酬は、あくまで契約が成立した場合にのみ請求できるものです。媒介や代理を依頼しただけでは、原則として報酬を支払う必要はありません。無事に売買契約や賃貸借契約が結ばれて、初めて「成功報酬」として請求権が発生するんですね。
- 上限額が法律(国土交通大臣の告示)で定められていること:
- 業者が自由に報酬額を決められるわけではありません! 消費者が不当に高額な手数料を請求されることがないように、取引の種類や金額に応じて、受け取れる報酬の上限額が細かく定められています。
- <NG> もし業者がこの上限額を超えて報酬を要求したり、受け取ったりすると、宅建業法違反となり、罰金や、悪質な場合には懲役といった厳しい罰則の対象になります! 絶対にダメ!
- 例外:特別な広告費用など
- 通常の仲介業務に含まれないような、依頼者(お客さん)からの特別な依頼に基づいて行った広告(例えば、通常使わないような特別な媒体への掲載依頼など)については、契約の仲介が成功しなくても、その実費を別途請求できる場合があります。ただし、これはあくまで「依頼者の依頼に基づき」「実費を」請求できるケースに限られます。
報酬計算の基礎!消費税の扱い
報酬の上限額を計算する上で、忘れてはいけないのが「消費税」です。
法律(告示)で定められている報酬の上限額は、消費税を含まない税抜きの金額で示されています。
宅建業者が課税事業者である場合(ほとんどの業者が該当します)、計算した上限額に、別途消費税相当額を加算して請求することができます。
この記事では、現在の消費税率10%を前提として計算例を示していきますね! つまり、税抜きの計算結果に1.1を掛ける、ということです。
ケース別!報酬上限額の計算方法をマスターしよう!
さあ、ここからは具体的なケースごとに、報酬の上限額がどうやって決まるのかを見ていきましょう! 売買なのか賃貸なのか、媒介なのか代理なのかでルールが変わるので、しっかり区別してくださいね!
【売買・交換】報酬上限額の計算式はコレ!
まずは、不動産の売買や交換の媒介・代理の場合です。報酬の上限額は、取引した物件の価格(税抜)に応じて、以下の計算式(速算式)で求められます。
<売買・交換の報酬上限額 計算式(税抜)>
- 取引価格が 400万円を超える場合:
- (取引価格 × 3% + 6万円)
- 取引価格が 200万円を超え 400万円以下の場合:
- (取引価格 × 4% + 2万円)
- 取引価格が 200万円以下の場合:
- (取引価格 × 5%)
そして、この計算結果に消費税(10%)を加えた額が、最終的な報酬の上限額(税込)になります。
計算例
- 例1:取引価格 2,500万円の場合 (400万円超)
- 税抜上限額 = (2,500万円 × 3% + 6万円) = (75万円 + 6万円) = 81万円
- 税込上限額 = 81万円 × 1.1 = 89万1,000円
- 例2:取引価格 300万円の場合 (200万円超~400万円以下)
- 税抜上限額 = (300万円 × 4% + 2万円) = (12万円 + 2万円) = 14万円
- 税込上限額 = 14万円 × 1.1 = 15万4,000円
- 例3:取引価格 150万円の場合 (200万円以下)
- 税抜上限額 = (150万円 × 5%) = 7万5,000円
- 税込上限額 = 7万5,000円 × 1.1 = 8万2,500円
一番よく使うのは「取引価格 × 3% + 6万円」の式ですが、これは400万円を超える場合限定です! 取引価格が低い場合は計算式が変わるので、うっかり間違えないように注意してくださいね!
【売買・交換】媒介(仲介)の場合のルール
上記の計算式で出した上限額は、あくまで「依頼者1人あたり」の上限です。媒介(仲介)の場合、誰からいくらもらえるかは、依頼の受け方によって変わります。
- 依頼者が1人(売主だけ or 買主だけ)の場合:
- その依頼者から、上記計算式で計算した上限額まで報酬を受け取ることができます。
- 依頼者が2人(売主と買主の両方)の場合:
- 売主から上限額まで、かつ、買主からも上限額まで、それぞれ報酬を受け取ることができます。
- つまり、合計すると、上限額の最大2倍まで受け取れる可能性がある、ということです。
具体例:2,500万円の物件の媒介、業者は課税事業者
- 売主からのみ依頼を受けたA社: 売主から最大89万1,000円まで受領可能。
- 買主からのみ依頼を受けたB社: 買主から最大89万1,000円まで受領可能。
- 売主と買主の両方から依頼を受けたC社: 売主から最大89万1,000円、かつ、買主からも最大89万1,000円、合計で最大178万2,000円まで受領可能。
【売買・交換】代理の場合のルール
次に、代理の場合です。代理は媒介よりも業者の権限が大きい(契約を代理で締結できたりする)分、報酬の上限も変わってきます。
- 依頼者が1人(売主だけ or 買主だけ)の場合:
- なんと、媒介の場合の上限額の2倍まで、その依頼者から報酬を受け取ることができます!
- 依頼者が2人(売主と買主の両方)の場合(双方代理):
- ここが超重要! 双方代理の場合、売主から受け取れる上限額も、買主から受け取れる上限額も、それぞれ「媒介上限額の2倍」なのですが、両者から受け取れる報酬の「合計額」が、媒介上限額の2倍を超えてはいけない、というルールがあります!
<具体例:2,500万円の物件の代理、業者は課税事業者>
- 売主からのみ代理依頼を受けたA社: 売主から最大178万2,000円(89.1万円×2)まで受領可能。
- 売主と買主の両方から代理依頼を受けたB社(双方代理):
- 売主から受け取れる上限も178.2万円、買主から受け取れる上限も178.2万円ですが…
- 売主と買主から受け取る報酬の合計額が、178万2,000円を超えてはいけません!
- 例:売主から100万円、買主から78万2,000円 → OK (合計178.2万円)
- 例:売主から178万2,000円、買主から0円 → OK (合計178.2万円)
- 例:売主から150万円、買主から100万円 → NG! (合計250万円となり、上限オーバー!)
双方代理の「合計額」の制限、しっかり覚えてくださいね! 片方から満額もらったら、もう片方からは1円ももらえない、ということです!
【特例】低廉な空家等(800万円以下)の売買・交換の媒介
ここで、売買・交換の媒介に関するちょっと特別なルール、「低廉な空家等の特例」について解説します! これは比較的新しいルールで、空き家問題などに対応するために設けられました。
- 特例ができた背景:
- 取引価格が低い物件(特に地方の空き家など)は、通常の報酬計算式だと、業者が受け取れる手数料も少なくなってしまいます。しかし、実際には現地調査や役所調査などで手間や費用がかかることが多く、業者が積極的に扱いたがらない、という問題がありました。これでは空き家の流通が進みませんよね。
- 対象となる物件:
- 取引価格(税抜)が800万円以下の宅地または建物。
- 「空家等」という名前ですが、条文上「使用の状態は不問」とされているので、実際に人が住んでいる家や利用されている土地でも、価格が800万円以下であれば対象になります!
- 特例の内容(媒介の場合):
- 通常の報酬計算式(例:4%+2万や5%)の結果に関わらず、依頼者(売主または買主)それぞれから、最大で30万円(税抜)、つまり税込33万円を上限として報酬を受け取ることができる、というものです。
- 注意! この特例は媒介の場合に適用されます。代理の場合は、通常の代理報酬(媒介上限の2倍)のルールが適用されます。また、この特例を使うかどうかは、あくまで業者の判断であり、必ず33万円請求されるわけではありません。
- 目的:
- 低額な物件でも、業者が調査費用などに見合った報酬を得られるようにすることで、空き家などの流通を促進すること。
以前は400万円以下の物件について、調査費用を加算できるという似たルールがありましたが、改正されて800万円以下・上限33万円(税込)に統一されました。より使いやすい特例になったと言えますね!
【賃貸借】報酬上限額は「家賃1ヶ月分」が基本!
さて、お次は賃貸借(アパート、マンション、店舗、事務所、土地などの賃貸)の媒介・代理の場合です。売買とはルールがガラッと変わります!
- 大原則:
- 貸主と借主、双方から受け取れる報酬の「合計額」が、借賃(家賃)の1ヶ月分 + 消費税 を超えてはいけません!
- これが賃貸借の報酬における絶対的な大原則です! まずはこれをしっかり頭に入れてください!
居住用建物「以外」(事務所・店舗・土地など)の媒介
- 貸主・借主の双方から依頼を受けた場合:
- 合計で家賃1ヶ月分+消費税までなら、貸主と借主からの配分は自由です。例えば、家賃20万円の店舗なら、合計22万円(税込)まで。貸主から11万円、借主から11万円でもOKですし、貸主から22万円、借主から0円でもOKです。この配分について、依頼者の承諾は特に必要ありません。
- 貸主・借主のどちらか一方から依頼を受けた場合:
- その依頼者から、家賃の1ヶ月分+消費税まで報酬を受け取ることができます。
居住用建物(アパート・マンションなど)の媒介
ここが、賃貸の中で一番ややこしいポイント! 私たちが普段部屋を借りる時に適用されるルールです。
- 原則:
- 依頼者(貸主または借主)の一方から受け取れる報酬の上限は、原則として借賃(家賃)の0.5ヶ月分 + 消費税 までとされています!
- 例外:
- ただし、依頼を受ける際に、あらかじめ依頼者の承諾を得ていれば、その承諾した依頼者から借賃の1ヶ月分+消費税まで報酬を受け取ることができます。
- 重要! もし、片方の依頼者(例えば貸主)から承諾を得て1ヶ月分の報酬を受け取った場合は、もう片方の依頼者(借主)からは、1円も報酬を受け取ることはできません! (合計で1ヶ月分の上限を超えるため)
<具体例:家賃10万円のアパートの媒介、業者は課税事業者>
- 原則: 貸主から最大5.5万円(税込)、借主から最大5.5万円(税込) → 合計11万円
- 例外①(借主が承諾した場合): 貸主から最大5.5万円(税込)、借主から最大11万円(税込) → これはNG! 合計16.5万円となり、1ヶ月分(11万円)の上限を超える。
- 例外②(借主が承諾した場合): 貸主から0円、借主から最大11万円(税込) → OK! 合計11万円
- 例外③(貸主が承諾した場合): 貸主から最大11万円(税込)、借主から0円 → OK! 合計11万円

住むための家を借りる時は、原則、仲介手数料は家賃の半月分までなんですね! でも、契約前に『承諾』しちゃうと1ヶ月分払うケースもあるってことなんですね!
賃貸借の代理
- 代理の場合の上限額は、媒介の場合(居住用・非居住用問わず)の合計額と同じ、借賃の1ヶ月分+消費税です。依頼者1名から、この額まで受け取ることができます。
- 双方代理の場合も、売買の双方代理と同じく、合計で借賃の1ヶ月分+消費税が上限となります。
【特例】権利金がある場合(居住用建物以外)
最後に、賃貸借のもう一つの特例です。これは、事務所や店舗、土地な「居住用建物以外」の賃貸借で、「権利金」の授受がある場合に適用される可能性があります。
- 権利金とは?: 賃料とは別に、契約時に借主から貸主に支払われる一時金で、返還されないものを指します。礼金などがこれに該当することがあります。(敷金や保証金は通常返還されるので対象外)
- 特例の内容:
- もし権利金の授受がある場合、業者は、①「権利金の額」を「売買代金」とみなして、売買の報酬計算式で算出した額と、②「借賃の1ヶ月分+消費税」 を比較して、どちらか高い方の額を、報酬の上限とすることができます。
- つまり、権利金が高額な場合は、家賃1ヶ月分よりも高い報酬を受け取れる可能性がある、ということです。
この権利金の特例は、計算が少し複雑になるので、まずは「居住用建物以外で権利金がある場合は、売買の計算式が使えるケースもあるんだな」くらいに覚えておけばOKですよ!
まとめ
宅建業者の報酬(仲介手数料)、そのルールと計算方法、ご理解いただけましたか? 上限額がしっかり定められていること、そして取引の種類や形態によって計算方法が変わることを知っておくのは、とても大切です!
今回の重要ポイントをまとめますね!
- 報酬の基本: 成功報酬であり、法律(告示)で上限額が定められている(消費税別途)。上限超えは罰則あり!
- 売買・交換の計算式:
- 400万超:(価格×3%+6万)+税
- 200万超400万以下:(価格×4%+2万)+税
- 200万以下:(価格×5%)+税
- 売買・交換の媒介: 片方依頼なら上記上限まで、双方依頼なら各々上限まで(合計2倍まで)。
- 売買・交換の代理: 片方依頼なら媒介上限の2倍まで、双方代理なら合計で媒介上限の2倍まで!
- 低廉な空家等特例(売買・交換媒介): 800万円以下の物件なら、売主・買主それぞれから最大33万円(税込)までOK!
- 賃貸借の計算式: 合計で家賃1ヶ月分+消費税が上限!
- 賃貸借の媒介:
- 居住用以外: 合計1ヶ月分まで配分自由。
- 居住用: 原則、一方からは0.5ヶ月分まで。承諾あれば一方から1ヶ月分まで(他方ゼロ)。
- 賃貸借の代理: 依頼者から家賃1ヶ月分まで(双方代理は合計1ヶ月分)。
- 権利金特例(居住用以外賃貸): 権利金を売買代金とみなした計算額と家賃1ヶ月分を比べ、高い方を上限にできる。
覚えることが多くて大変ですが、特に計算式や、媒介・代理、居住用・非居住用の違いなどを中心に、過去問などを解きながらしっかり復習してくださいね!

これで仲介手数料の計算も怖くないですね! ルールを知って、賢く不動産取引を進めましょう! 試験勉強、応援してます!