宅建試験の税金分野、今回は「登録免許税(とうろくめんきょぜい)」について解説します。「登記するときにかかる税金でしょ?」となんとなく知っている方もいると思いますが、具体的に「何に対して」「誰が」「いつ」「いくら」納めるのか、そして特に重要な「税金が安くなる条件(軽減税率)」について、正確に理解できていますか?
「課税標準って売買価格のこと?」「売主と買主、どっちが払うの?」「マイホームを買ったら絶対安くなるの?」など、細かい疑問も出てきやすい分野ですよね。計算の基になる数字の考え方や、軽減措置を受けられるかどうかの条件をしっかり押さえることが、この税金を理解する鍵になります。
この記事では、そんな登録免許税の基本から、宅建試験で特に狙われやすい「課税標準の考え方」「納税義務者」、そして最重要ポイントである「住宅用家屋の軽減税率の適用要件」などを、わかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事を読めば、登録免許税の仕組みがスッキリ理解でき、特に複雑な軽減税率の要件も自信を持って答えられるようになりますよ!
<この記事でわかること>
- 登録免許税がどんな税金で、なぜ必要なのか
- 税額計算の基礎となる「課税標準」の考え方
- 登録免許税の納税義務者、納付時期、納付方法
- 住宅用家屋(マイホーム)取得時の登録免許税が安くなる「軽減税率」の詳しい適用要件
- 宅建試験で特に注意すべきポイント
登録免許税のキホン | 登記と税金の関係・課税標準・納税義務者
まずは、登録免許税がどのような税金なのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。
登録免許税ってどんな税金?なぜ登記に税金がかかるの?
登録免許税とは、不動産の登記や、会社の設立登記(商業登記)、特定の免許・許可などを受ける際に課税される国税です。宅建試験では、主に不動産登記に関する登録免許税が出題されます。
不動産登記は、土地や建物の所有権が誰にあるのか、抵当権などの権利が設定されているかなどを公に示す(公示する)ことで、取引の安全を守る重要な制度です。この登記制度を利用し、権利を登記簿に記録・公示してもらうことに対して課される、いわば「登記の手数料」のような性格を持つ税金だと考えると分かりやすいかもしれませんね。

登記っていうサービスを受けるから、その手数料として税金を納めるイメージなんですね。
税額計算の基礎!課税標準は何になる?
登録免許税の税額も、基本的には「課税標準 × 税率」で計算されます。では、登録免許税の「課税標準」は何になるのでしょうか?
- 原則:不動産の価額(固定資産税評価額)
所有権の保存登記や移転登記など、多くの不動産登記に関する登録免許税の課税標準は、原則としてその不動産の価額です。ここでいう「不動産の価額」とは、実際に売買された取引価格(売買代金)ではなく、市町村が管理する固定資産課税台帳に登録されている価格、いわゆる「固定資産税評価額」のことを指します。ここ、間違えやすいので注意してくださいね!
<NG>売買契約書に書かれた金額が課税標準になるわけではありません! - もし、新築の建物などで固定資産課税台帳に価格が登録されていない場合は、法務局の登記官が認定した価額が基準となります。
- 例外①:債権金額
抵当権の設定登記や、賃借権の設定登記など、担保される債権の金額や権利の金額が明確な場合は、その債権金額などが課税標準になります。 - 例外②:不動産の個数(定額)
登記の抹消(例:住宅ローン完済による抵当権抹消登記)や、住所変更登記など、不動産の価額や債権額に関係なく手続きを行う登記については、不動産1個につき〇〇円というように、定額で税額が定められています。(例:抹消登記は不動産1個につき1,000円) - 最低課税標準
計算のもとになる不動産の価額や債権金額が1,000円未満の場合は、課税標準は一律1,000円として計算されます。
登録免許税の課税標準は、登記の種類によって「不動産の価額(固定資産税評価額)」「債権金額」「不動産の個数」のいずれかになる、と覚えましょう!
誰がいつ、どこで納めるの?納税義務者・納付時期・納税地
次に、誰が、いつ、どこで登録免許税を納めるのかを見ていきましょう。
- 納税義務者
登録免許税の納税義務者は、原則としてその登記を受けることによって権利を得たり、利益を受けたりする人、つまり「登記を受ける者」です。
- 所有権保存登記(新築建物の最初の登記):その建物の所有者(表題部所有者や相続人など)
- 所有権移転登記(売買):不動産の所有権という権利を得るのは買主です。ただし、売買による所有権移転登記は、売主(登記義務者)と買主(登記権利者)が共同で申請するのが原則です。そのため、法律上は売主と買主が連帯して納税義務を負うことになります。
<ヒント>実務上は登記によって利益を受ける買主が登録免許税を負担することが一般的です。 - 抵当権設定登記:抵当権という権利を得るのはお金を貸す抵当権者(金融機関など)です。登記も金融機関と設定者(通常は不動産所有者=債務者)が共同申請します。
納税義務者は登記権利者である抵当権者ですが、実務上はローン契約の特約などで、お金を借りる設定者(債務者)が負担することがほとんどです。
- 納付時期
登録免許税は、登記の申請をする時までに納付しなければなりません。 - 納付方法
原則として、税額に相当する現金を銀行などで納付し、その領収証書を登記申請書に貼り付けて提出します。ただし、税額が一定額(現在は3万円)以下の場合などは、収入印紙を申請書に貼って納付することも認められています。 - 納税地
登録免許税を納付し、登記を申請する場所(納税地)は、その登記を管轄する法務局(登記所)です。通常は、不動産の所在地を管轄する登記所になります。<NG>納税義務者(買主など)の住所地を管轄する登記所ではないので注意しましょう!

登記申請の時に、不動産の場所を管轄する法務局で納める、ということですね。
住宅用家屋の軽減税率 | マイホーム取得時の税金が安くなる!
登録免許税の学習において、最も重要で試験にも頻出なのが、個人が自分の住むための家(住宅用家屋)を取得した場合の税率の軽減措置です。マイホームの取得を税制面から支援するための制度ですね。この軽減措置の対象となる登記の種類と、適用を受けるための要件をしっかりマスターしましょう!
登記の種類によって税率が変わる!
登録免許税の税率は、登記の種類や原因によって細かく定められています。例えば、以下のような税率が定められています(※税率は変更されることがあるため、あくまで参考としてください)。
<登録免許税の主な税率(本則)一覧表>
登記の種類 | 課税標準 | 税率(本則) |
---|---|---|
所有権保存登記 | 不動産の価格 | 4/1000 (0.4%) |
所有権移転登記(売買) | 不動産の価格 | 20/1000 (2.0%) |
所有権移転登記(相続) | 不動産の価格 | 4/1000 (0.4%) |
所有権移転登記(贈与) | 不動産の価格 | 20/1000 (2.0%) |
抵当権設定登記 | 債権金額 | 4/1000 (0.4%) |
登記の抹消 | 不動産の個数 | 1個につき 1,000円 |
宅建試験で、これらの本則税率の数字自体を細かく暗記する必要性は低いです。ただ、「売買による所有権移転は税率が高いな」「相続は比較的低いな」といった大まかなイメージを持っておくと良いでしょう。
マイホームならお得!軽減税率が適用されるケース
上記の本則税率に対して、個人がマイホームとして住宅用家屋を取得し、一定の要件を満たす場合には、以下の登記について税率が軽減されます。
【軽減税率の対象となる主な登記】
- 住宅用家屋の所有権保存登記(新築のマイホームの最初の登記)
- 住宅用家屋の所有権移転登記(中古のマイホームを売買または競落で取得した場合の登記)
- 上記1.または2.の住宅用家屋の取得資金にかかる抵当権の設定登記(住宅ローンを組んだ場合の登記)
【軽減後の税率例】(※こちらも税率は変更されることがあるため参考)
<軽減税率の比較表(例)>
登記の種類 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
所有権保存(建物) | 4/1000 | 1.5/1000 |
所有権移転(売買・競落)(建物) | 20/1000 | 3/1000 |
抵当権設定 | 4/1000 | 1/1000 |
所有権移転(売買)(土地※) | 20/1000 | 15/1000(※適用期限あり) |
※土地の所有権移転登記の軽減税率(15/1000)は、上記の住宅用家屋の軽減とは別の租税特別措置法上の規定で、適用には期限があります(2025年4月現在、2027年3月31日まで)。宅建試験では、主に建物に関する軽減税率が重要です。

結構安くなりますね!特に売買の移転登記は2.0%→0.3%って、かなり大きい!
【要暗記】軽減税率を受けるための適用要件
このお得な軽減税率を受けるためには、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。ここが宅建試験で最もよく問われる部分なので、しっかり覚えましょう!
<チェックリスト>【住宅用家屋 軽減税率の主な適用要件】
- □ 個人が、自己の居住用(セカンドハウスや投資用は不可)として新築または取得した家屋であること。
- □ 新築または取得後、1年以内に登記されること。
- □ その家屋の登記簿上の床面積が50㎡以上であること。
- □ (中古住宅の所有権移転登記の場合)以下のいずれかを満たすこと。
- 築年数要件:耐火建築物(マンション等)は築25年以内、非耐火建築物(木造戸建等)は築20年以内であること。
- 上記築年数を超えていても、その家屋が新耐震基準に適合していることについて証明されたもの(耐震基準適合証明書など)であること、または既存住宅売買瑕疵保険に加入していること。
- □ (所有権移転登記の場合)取得の原因が売買または競落であること。<NG>贈与や相続によって取得した場合には、所有権移転登記の軽減税率は適用されません!
- □ (抵当権設定登記の場合)その抵当権が、上記の要件を満たす住宅用家屋の新築または取得のための資金の貸付けにかかるものであること。
これらの要件は非常に重要です!特に「個人」「自己居住用」「1年以内登記」「床面積50㎡以上」「中古の築年数/耐震基準」「売買・競落」といったキーワードは確実に押さえてください。
まとめ
今回は、不動産登記に欠かせない「登録免許税」について、その基本から宅建試験で最重要となる住宅用家屋の軽減税率まで詳しく解説しました。
登記の種類によって課税標準や税率が異なり、特にマイホーム取得時にはお得な軽減措置があることを理解いただけたでしょうか。
最後に、今回の重要ポイントをしっかり復習しましょう!
- 登録免許税は、不動産登記等の際に課税される国税です。
- 課税標準は、原則として不動産の価額(固定資産税評価額)ですが、抵当権設定は債権金額、抹消登記は不動産の個数になります。
- 納税義務者は原則として登記を受ける者で、納付時期は登記申請時、納税地は管轄の登記所です。
- 住宅用家屋については、所有権保存登記、所有権移転登記(売買・競落)、抵当権設定登記に軽減税率が適用される場合があります。
- 軽減税率の適用には、「個人」「自己居住用」「取得後1年以内登記」「床面積50㎡以上」「中古の築年数/耐震要件」「取得原因が売買/競落」などの厳しい要件をすべて満たす必要があります。

登録免許税は、特に軽減税率の適用要件が試験で繰り返し問われています。この記事を参考に、正確な知識を身につけ、過去問演習を通じて確実に得点できるようにしてくださいね!